第1話 海賊、グランニールの一味
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ーを靡かせる、若い男。貧相な装備でありながら、グランニールの蹴りを止めているその人物は、騎士達も身に覚えがなく、隊長は得体の知れない第三者の出現に困惑する。
そんな周囲の反応から、老戦士は目の前で自分の蹴りを止め、並々ならぬ気迫でこちらを見据える若き剣士が、騎士達に与する者ではないと看破した。
「う、うそだ……父さんの蹴りを、あんなオンボロの盾で止めるなんて!」
「……いや、違うな。盾ではなくこの者自身の膂力で、私の蹴りを凌いでいる。……何者だ? 騎士ではないようだが」
「何者だろうとあなた方には関係ない。引かないなら、叩きのめすだけだ」
「……」
ずぶ濡れの格好。ボロボロに擦り切れた銅の剣と木の盾。どれをとっても騎士達の仲間とは言い難い風貌である。
長髪の美男子ではあるが、そんな容姿の素材も帳消しにしてしまうようなみずぼらしさだ。
だが――注目すべきはそこではない。問題は、そんな彼が騎士達を何人も跳ね飛ばしてきたグランニールの蹴りを防いで見せたことにある。
間違いなく、他の騎士達とは一線を画する強さ。騎士達の最強戦力であり、自分達の「侵略」が成功しない最大の要因である「シン」にも迫る戦闘力であることは明白だった。
無論、その点は騎士達も注目しているようであり――隊長を含む誰もが、謎の実力者に目を奪われているようだった。
(この青年……並外れた実力を備えている上に、義に溢れた良い眼をしている。だが……この様子を見るに、事情は何も知らぬようだ)
そのさなか。いち早く彼の人柄を眼差しから察したグランニールは、彼の盾から脚を離すと距離を取り、構え直した。
そんな彼の気迫に触れた青年――ダタッツもまた、腰から銅の剣を抜く。
「くっ……!」
すると、シュバリエルは素早く身を翻すとダタッツの背後に周り、その背中に四本の矢を向ける。引き絞られた弓から、ギリギリと音が鳴った。
実態も目的もわからない、突如現れた謎の人物。だが少なくとも、今この瞬間はグランニールと敵同士として相対している。彼に弓引く理由としては、それで十分だった。
「やめておけ。怪我をするぞ」
「……!? う、うるさいッ!」
だが、ダタッツはグランニールから目を離さないまま、背後に立つシュバリエルに警告する。こちらを見ずに手の内を看破されたことに困惑しつつも、幼い海賊は構わず矢を放った。
獅子波濤の四矢が、黒髪の剣士の背に降りかかる。
だが。
「なっ……!」
ダタッツは矢を見ることもなく、僅かに身を捻るだけで三本の矢をかわし。最後の一本を、指に挟んで止めてしまった。
さらにその矢をこともなげに、後方へ投げ返すのだが――その速度は、シュバリエルが矢を射る速さすら凌いでいた。
投げ
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