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ダタッツ剣風 〜災禍の勇者と罪の鉄仮面〜
第1話 海賊、グランニールの一味
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エルが視線で射抜く。だが、その眼光に気づいていながら、隊長はその嗤いを止めなかった。

「……はははは。そろそろ諦めたらどうだ海賊共。いや……元町長殿とその御子息、と言った方がよろしいか?」
「黙れ。貴様らバルキーテの一味に、これ以上この町を喰い物にはさせぬぞ」
「面白い。この人数を相手に、たった二人で戦うつもりか。……やれ!」

 そして彼の命令のもと、剣を振り上げた騎士達が一気になだれかかる。武器を携えた濁流が、津波となって覆いかぶさるように。

「阿修羅連哮脚ッ!」
「獅子波濤ッ!」

 だが、その波は町を飲み込む力はあっても――たった二人の人間だけは、飲み込めずにいた。旋風を巻き起こすグランニールの蹴りと、絶え間無く乱れ飛ぶシュバリエルの四矢が、波という波を蹴散らしている。
 刃の間を擦り抜けるように閃き、敵を撃ち抜く足の甲。鎧の隙間を縫い、肉という肉を貫く非情の矢。数の暴力さえものともしない圧倒的な「質」が、この戦況を作り出していた。

「ば、かな……! おのれ、おのれェェエ! シン様さえ、シン様さえお目覚めになれば貴様らなどッ……!」
「……ふん。結局はシン頼みか。今日こそは、シン共々貴様らを討ち取る。観念せよ」
「オレ達だって、この数年で腕を上げたんだ。もうシンにだって負けやしないぞ!」
「ぬうぅうぅッ……!」

 何十人と騎士達を投入しても、グランニールとシュバリエルは僅かな揺らぎもなく跳ね返していく。その状況を受け、隊長は憎々しげに顔を歪めた。
 グランニールは勇壮たる眼光で、その歪な形相の騎士を睨み――シュバリエルも強気な口調で隊長を挑発する。

「おのれ……調子に乗りやがってぇえ!」

 そんな二人に、怒りと憎しみを募らせた一人の騎士が踊りかかる。だが、グランニールは余所見しながらその剣の一閃を、指二本で止めてしまった。

「それは貴様らの方だろう。戦後の五年間、この町を蹂躙してきた貴様らの悪行も――ここまでだ!」
「ひっ……ひぃいいぃ!」

 そしてあっさりと、指の力だけで白銀の刃をへし折ってしまった。枝のように己の剣を折られ、騎士は恐怖に顔を引きつらせる。
 そんな彼を吹き飛ばそうと、グランニールが足を振り上げ――とどめの蹴りを放つ。

「ホワチャアッ……!?」

 その、時だった。

 容赦無く振り抜かれ、騎士を打ちのめすはずだった老戦士の脚は。振り下ろす瞬間で、止まっていた。
 蹴りを止めたのは、グランニールの意思ではない。彼の脚力さえ穿つ第三者が、この一撃を阻んだのだ。

「そこまでだ……海賊」

 ――古びた木の盾で、彼の蹴りを受け止めている謎の剣士という、第三者が。

「な、なんだ……あいつは!?」

 腰まで届く黒い長髪と赤いマフラ
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