暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜災禍の勇者と罪の鉄仮面〜
第1話 海賊、グランニールの一味
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から天高く跳び上がる彼らは、矢の隙間を縫うように空を裂いて宙を舞う。

「ぬうっ……ひるむな、掛かれェェエ!」

 屈強な男と、小さな子供。その凹凸の敵影は、ふわりと港の桟橋に着地する。目前まで接近された騎士達は、その超人的な身体能力を持つ彼らに、己の剣で挑みかかった。

「――阿修羅連哮脚(あしゅられんこうきゃく)ッ! ホワチャアァアァッ!」
「ぐぎゃああぁッ!」
「あぁあぁあッ!」

 その剣の濁流を――屈強な男の影が迎え撃った。両手を桟橋の上に着き、両脚を竜巻のように振るう彼の蹴りが、何人もの騎士を跳ね飛ばして行く。
 為す術なく、桟橋から海へと突き落とされていく騎士達。あっけなく吹き飛ばされた仲間達の惨状を見せ付けられ、騎士達の前進が勢いを失う。

 彼らが見せたその僅かな怯みが、さらなる追撃の狼煙となった。男の蹴り技を掻い潜るように、身を低く構えて前に進み出た子供の影が、ショートボウを引く。
 ――その指の隙間に、四本の矢を挟んで。

獅子波濤(ししはとう)ッ!」
「あ、ぎゃっ……!?」
「ひぎっ……!」

 水面から広がる波紋のように、波状に飛ぶ四矢(しし)。弓としては不安定極まりない構え方でありながら、小さな侵略者は寸分違わぬ制度で、最前線にいた四人の騎士の顔面を射抜く。
 常軌を逸する彼らの武芸を前に、騎士達は後退を余儀無くされ――やがて戦場は桟橋から港へと移されてしまった。

「おのれ、グランニールにシュバリエル……! 増援を呼べ、シン様がお目覚めになるまで持ち堪えるのだ!」

 町の近くまで侵入を許してしまったことに歯噛みしつつ、隊長は次の指示を下す。すでに彼の直属部隊は、二人の海賊を包囲していた。

 老境に入ったような白髪。炎天下の猛暑に焼かれた、浅黒い肌。真紅の眼光で周囲を射抜く、壮年の武人――グランニール。
 溌剌とした印象を与える茶色の短髪と、翡翠色の瞳を持つ、少女と見紛う美貌の弓使い――シュバリエル。

 毒々しい紫色の戦闘服を纏う二人の海賊は、包囲されていながら全く怯む気配がなく、むしろ闘志をより滾らせているようにも伺えるほどであった。
 だが、人数差は圧倒的である。二人しかいない彼らに対し、騎士達の数は八十人以上。多勢に無勢、という言葉をこの上なく体現した状況である。

「隊長! 増援部隊が合流しました!」
「よし、何としてもここでケリを付けるぞ。シン様の手を煩わせることなく奴らを撃退せしめれば、バルキーテ様の褒賞が待っているのだからな!」
「ハハッ!」

 隊長の言葉を受け、騎士は歪に口元を緩める。それを口にした隊長自身もまた、どこか禍々しい笑みを浮かべていた。
 そんな彼らの様子を、背中合わせで騎士達と対峙していたグランニールとシュバリ
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