第1話 海賊、グランニールの一味
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海賊船……!?」
「ちっ、この近辺を頻繁にうろついてるって噂は聞いてたが……間が悪いったらないぜ! 面舵いっぱい!」
青年が呟いた瞬間、船長は船全体に轟く怒号で、旋回を支持する。波を切る彼らの帆船が、大きくうねりを上げて航路を曲げた。
「……あの海賊船は?」
「わりぃな、そういや話してなかったか。あれはここ数年、あの港町を襲いに何度もやって来てる海賊船さ。毎回追い返されてはいるんだが、あいつらが来りゃ港はいつも大立ち回りよ。兄ちゃんには悪いが、上陸はあいつらが帰るまで待っててくれや」
「数年も……」
小さな港町に迫る、侵略者の船。その猛威を止める術も義務もないこの船は、荒事が終わるまで港町から離れるしかない。船員の命を預かる船長としては、当然の判断だろう。
ゆえに客人の青年は、何一つ物申すことなく。……金貨を詰めた小袋を、彼の前に差し出した。
「船長、これを」
「え? ろ、路銀かい? そんなもん降りる時でいいって言っただろ」
「はい。だから、ジブンはここで降ります。ここまで乗せて頂き、ありがとうございました」
「な、なにぃ!?」
そこから飛び出した言葉に、船長が目を剥く――より早く。青年は黒の長髪と赤マフラーを靡かせ、甲板を駆け出した。
言われるがままに小袋を受け取ってしまった船長は、慌てて制止しようと手を伸ばすが――その時にはすでに、彼は海へと身を投じていた。
「ダ、ダタッツさんっ! いくらなんでも無茶苦茶だぜそりゃあ!」
海中に消え、もはや届くはずのない彼へ、船長は狼狽した声色で訴える。だが返事はなく、ただ激しく波打つ海原だけが、船から見下ろす彼の視界を埋めていた。
海に消えた、ダタッツと呼ばれた長髪の青年は、ただ一人。
「……」
港町へと向かう。王国の、領地へ。
◇
「海賊だァァッ! 総員出合えェェエッ!」
山林と海原を繋ぐ地点に築かれた、小さな港町。そんなのどかな海の都に訪れようとしている来訪者を迎え撃つべく、屈強な騎士が剣を掲げて戦の始まりを町に告げた。
周辺の住民達は逃げ惑うように自分の家に飛び込んで行き、王国製の鎧を纏う騎士達が続々と港に結集していく。
一角獣をあしらった鉄兜。青い服の上に纏われた白銀の甲冑。青く塗られた柄から伸びる、真っ直ぐな刃。
勇ましさと凛々しさを備えた王国騎士の鎧が、彼らの威光を物語っているようだった。だが、海賊船はその防人達を前にしても怯むことなく、徐々に港へ近づいて行く。
そして――その船の上に、二つの人影が現れた瞬間。
「来たぞォォォ!」
隊長の叫びと共に、無数の矢が放たれた。雨の如く振り注ぐ矢の群れが、二つの人影に容赦なく襲いかかる。
だが、そこ
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