断章 生還のグラディウス
最終話 王国勇者
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
んだからね! ……ま、ポロも頑張った、らしいけど?」
「ぼ、僕なんか全然……」
「なよなよしてんじゃねー! リコリス親衛隊なら、胸張っていやがれ!」
「カ、カイン……」
先週の死闘が嘘だったかのように、リコリス親衛隊は元気を取り戻している。カインは身体の各部に包帯を巻いてはいるが、大の大人から暴行された後とは思えないほどの回復力を発揮していた。
そんな彼が率いるミィとポロも、リコリスの無事を確かめるように彼女の顔をまじまじと見つめ、胸を撫で下ろしているようだった。
子供達もリコリスも、こうして無事に生還することが出来た。彼が何度も宣言した通り、「大丈夫」だったのだ。
残酷な死と凌辱を味わうはずだった、自分達四人の運命が変わったことを実感し、リコリスは歓喜の色を表情に滲ませる。
「……ねぇリコリス様、ダタッツの奴いつ帰ってくるかな!」
「……!」
「今度はダタッツも誘って遊ぼうよ! リコリス様!」
「ぼ、僕も、ダタッツさんに会いたいな……!」
そんな彼女の胸中を知る由もなく、カインを筆頭に子供達が声を上げる。ダタッツの活躍は街中に知れ渡り、彼らの中にあの黒髪の騎士を疑う者はいなくなっていた。
それは喜ばしいことであり、彼がフィオナが待つ帝都へ旅立ったことは、何より祝福すべきことであった。
――が。
それでもどこか、彼女は切なげな想いを、あの日から胸に秘め続けていた。
(この気持ちは……許されてはならない気持ちです。誰にも、知られてはならない……私だけの……)
寝ても覚めても、気がつけばあの逞しい騎士の背を思い出している。弱り切った少年時代の一面しか知らなかった彼女にとって、凛々しい青年へと成長を遂げた彼の美貌は、乙女の胸中に耐え難い衝撃を与えていた。
――親友でもある皇女殿下の想い人と知りながら、その彼へと横恋慕してしまうほどに。
彼女自身は、その想いを許されざる恋と断じて頬を赤らめつつ、窓の外へと視線を移す。その向こうにいるであろう、彼の背に想いを馳せて――
「リコリス様ー、帝都はあっちだよ?」
「どこ見てんのかなー?」
「はうっ!?」
――いたのだが。何を思っていたのかを見透かされた挙句、全く逆の方向に熱を帯びた視線を送っていたことを指摘され、リコリスは羞恥に顔を赤らめるのだった。
◇
――その頃。
(勇者様……)
帝国の広大な街並みを一望できる帝国城のテラスに、一人の銀髪の美少女が佇んでいた。蒼いリボンで髪を一つに束ね、色白な肌を強調するかのような、ウェディングドレスを彷彿させる形状の礼服。
その絶対的な美貌の前には帝国の誰もがひれ伏し、不動の忠誠を誓うと言われている。彼女が一声掛ければ、その命令のために我が
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ