断章 生還のグラディウス
第6話 奴隷商との決戦
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そんな哀しみだけが、胸を突く日々だった。その哀しみが、このような形で晴らされるなど、どうして想像できようか。
大切な親友の、心からの笑顔を見ることさえ叶わず、奴隷に落とされる運命にあった自分を救い出してくれた騎士が、彼だったなど。
「ダ、タッツ……様……!」
「七年も、心配を掛けて……済まなかった。もう、大丈夫だから。……リコリスさん」
「ぅ、あぁあ……あぁああっ!」
状況は理性で理解できても、心はまるで追いつかない。その責任を求めるように、リコリスは騎士の胸元へと駆け出した。
その胸に身を委ねんと、彼女は幼子のように啜り泣き、ひた走る。
そんな彼女を、穏やかに見つめた後。ダタッツは、困惑しているミィに苦笑いを送りつつ、両手を開いて迎え入れる準備をする。
(……俺はずっと、この温もりが欲しかったのかも知れない。俺を人として迎え入れてくれる、この温もりが)
そして、彼女がダタッツの胸に飛び込む――その時だった。
「きゃん!」
子犬のような悲鳴と共に、リコリスは路傍の小石に躓き。べちゃり、と顔面から転倒してしまった。
豊満な臀部を突き出し、顔と胸を地面に沈めたその光景に、ダタッツとミィは二人揃って微妙な表情になる。
そんな彼女の一面から、黒髪の騎士は彼女のある「属性」を垣間見るのだった。
(ど、どじっ娘……)
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