暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
断章 生還のグラディウス
第6話 奴隷商との決戦
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えよ。リコリス親衛隊を、ナメんじゃないっ!」

 そして、勇ましく短剣を振りかざしながら、階段を駆け下りて行く。その後ろ姿を、暫し微笑ましく見送ったダタッツは――自分を睨む悪漢に目を移した。

「なんだ……なんだ今のは、一体なにをしやがった!」
「短剣を投げて大槍を壊した……それだけのことだが? 速すぎて見えなかったか?」
「バカな! あんなちっぽけな剣を投げつけたくらいで、俺の大槍がッ――!」
「――ちっぽけなんかじゃない」

 唾を吐き散らし、眼前の現実を拒絶するリーダー。そんな彼を諭すかのように、ダタッツは静かに――それでいて、厳かに告げる。

「あの短剣は、戦火の果てに生まれた命が、大切なものを護るために振るわれた剣。例え刃が小さかろうと、弱き者を屠ることにしか使われない脆弱な大槍を穿つには、過ぎた『強さ』を持っている」
「バ、バカな……こんなバカなッ……!」
「――さ、話は終わりだ。部下は全滅、得物は大破。もうお前に勝ち目はない、大人しく投降しろ」

 その宣告は、洞窟内に静かに響き渡る。――が、リーダーは焦りを表情に滲ませながらも、口元を歪に釣り上げ獰猛な笑みを浮かべた。

「投降だとォ……バカ言えェッ!」
「――ッ!」

 次の瞬間。目にも留まらぬ速さで、リーダーの懐に隠されていた刃が、唸りを上げてダタッツに襲い掛かる。空を裂く脅威を察知した彼は、咄嗟に首を捻るが――その頬に、赤い傷跡が残された。
 刃はやがて空を駆け抜け、持ち主の手へと帰ってくる。くの字に曲がった刃が、ダタッツの血を吸って妖しい輝きを放っていた。

「ブーメラン、か」
「ハッハハハ! 俺にはまだこいつがある! だが貴様は丸腰! 勝負あったな、身の程知らずが!」

 優位を取り戻したことで増長し、狂ったように嘲笑の声を上げるリーダー。そんな彼を冷ややかに見つめながら、ダタッツは静かに呟く。

「ならさっさと終わらせてみろ。その玩具でジブンを殺せるというなら」
「なっ――なんだとォッ!? 負け惜しみ抜かしやがって……死ねえぇえ!」

 その挑発を受けた悪漢は、目を剥いて憤怒の形相となり――勢いよくブーメランを振りかぶる。回転する刃は空間を切り裂き、弧を描くように、ダタッツに襲い掛かった。
 この状況に立たされてなお、ダタッツに動きはない。もうすぐ減らず口も終わると確信したリーダーは、歪に釣り上った口元から涎を垂らす。

 ――しかしその未来は、夢想に終わった。

「は――ッ?」

 ダタッツの首を切り落とさんと、唸りを上げて襲い来る刃。その刃先を――彼は指二本で挟み、止めてしまったのだ。
 必殺の意思で放った、渾身の一閃を、指二本で。

 あまりに現実離れした光景に、リーダーは理解が追いつかず間抜け
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