断章 生還のグラディウス
第5話 リコリス親衛隊の勇気
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して潜む、その魔境に――黒塗りの馬車が駆け込んでくる。仲間達が無事に帰ってきたと、安堵した悪漢の群れは、任務を果たして来たのであろう彼らを迎え入れ――
「うぎゃあ!?」
「なっ、なんだこいつらっ――ぎあぁあ!」
――荷台から飛び出してきた曲者の、奇襲を浴びることとなる。
短剣の柄による殴打、体術による回し蹴り。あらゆる打撃に打ちのめされた野獣達の体が、地面に叩きつけられていく。
その初撃に入り口の外にいた者達は全滅し、立っているのはダタッツ一人のみとなった。奇襲が始まり、まだ三十秒も経っていないが。
「……あ、あんたって、こんなに強かったんだ……」
「ミィ、作戦はわかってるか?」
「子供だからってバカにしすぎ! あんたが暴れてる間に、リコリス様を助け出すんでしょ? ……でも、本当に大丈夫なの? カインだって、あんなに……」
馬車から降りて来た赤毛の少女は、ダタッツの赤いマフラーを摘みながら、上目遣いでその顔を見上げる。幼馴染が痛めつけられる様を見せつけられた手前、不安が拭えないらしい。
そんな彼女の頭を優しげに撫でつつ、ダタッツは穏やかに笑いかける。先ほどまで修羅の形相で男達を打ちのめしていた騎士とは、似ても似つかぬ表情だ。
「……大丈夫、大丈夫。今頃、騎士団が保護してくれてるさ。ポロが報せてくれたおかげで、ジブンも間に合ったしな」
「え? あ、あのポロが……?」
「強い子だよ、あの子は。いつの日かきっと、君やカインにもわかる」
「……」
自分達が窮地を脱したきっかけが、あの意気地なしのポロだと言われ、ミィは複雑な表情で俯く。そんな彼女に微笑みながら、ダタッツは階段を降りて地下の洞窟へ向かった。
――あの日、自分の手を握った、あの温もり。記憶の片隅で生きる、その感覚を求めるように。
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