断章 生還のグラディウス
第4話 反撃の狼煙
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スは反撃のため背中の槍に手を伸ばし――
「ぎぇえッ!」
「こっちの要求はわかるだろう。変な気を起こすと怪我が増えるぞ」
――その手を握り潰されてしまう。鮮血が噴き出す根元からは、握撃によって白い骨が放り出されていた。
激痛による気絶から、さらなる激痛で呼び覚まされる。その責め苦に威勢を挫かれたカルロスは、観念したように視線で降伏を訴えた。
それを汲んだ男――ダタッツは、カルロスを降ろすと冷酷な眼差しで言外に命じる。さっさと案内しろ、と。
「ダタッツさん、ダタッツさんどうしよう! カインが、ミィが攫われた!」
「なに!?」
その時だった。家に帰したはずのポロが、切迫した表情で駆け込んでくる。その報せを受けたダタッツは目の色を変え、カルロスを睨み付けた。
「他にも仲間を連れていたのか。連中はどこだ!」
「ま、街の入り口からここに続く街道の途中だ! で、でも俺が連れてきたわけじゃねえ!」
「……途中でブラフに気づいて、こいつを連れ戻しに来たのか。そこでカインとミィに見つかって……くそッ!」
予想だにしない展開に、ダタッツは初めて表情に焦りを滲ませる。そして、すぐさまカルロスの首を掴むと、彼を引きずりながら壁の大穴から外へ飛び出して行った。
「案内しろ、死にたくなかったらな!」
「ぎゃああぁあ! す、する! 案内するから離し、離してくれ! 離してくださいお願いします! 骨、骨が地面に当たって……いでぇえぇえ!」
あっという間に姿を消した二人。その様子を、ポロはただ、黙って見ていることしかできなかった。
ダタッツがカルロスを引きずり込んだ時から今に至るまで、一分も経っていない。轟音に眠気を覚まされた帝国騎士達が、慌てて牢に駆け込んで来た頃には、すでにポロだけが残された状態であった。
「な、なんださっきの――う、うわぁああ! なんだこれ、牢の壁が!」
「おいポロ! あのダタッツとかいう男はどうした! 一体ここで何があった!?」
駆けつけた帝国騎士達は、破壊されたレンガ壁を目の当たりにして、戦慄する。そんな彼らの詰問に応える余力もなく、少年は両膝を着いた。
少年に出来ることはもう、何もない。――あの黒髪の騎士が語った言葉が、真実になると信じるしか。
(ダタッツさん……みんなぁ……!)
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