暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
断章 生還のグラディウス
第4話 反撃の狼煙
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見つめた後。カルロスは骨と皮だけのような細身を走らせ、目的地へと風のように向かっていく。
 鉄格子で阻まれた窓が見えたのは、それから数分も経たないうちのことだった。

「へっ……それじゃあ、とっとと済ませて帰るとするかい。ここまで来てお縄なんてゴメンだからな」

 舌なめずりと共に、レンガ造りの壁をよじ登った彼は、鉄格子を掴んで自身の上体を引き上げる。そして、その先にある牢の中を見下ろし――

「あ……? な、なんでぇ。誰もいねぇじゃねえか」

 ――そこにいるはずのダルマ男の姿が見えず、目をしばたたかせる。
 もしや、すでに取り調べ室に連れて行かれたのでは。なら、話を聞き出した騎士達も狙うしか……。

 そう思考を巡らせた彼が、背にした槍に手を伸ばした――その時。

「があっ!?」

 突如、レンガが砕ける音が響き渡り――同時に、カルロスの細足が何かに引っ張られた。予想だにしない事態に、彼は思わず声を漏らして下を見やる。
 ――そこには、レンガ壁を突き破った何者かの手が、自分の片足を掴んでいる、という異常な光景が広がっていた。

「ぎゃああぁあッ!?」

 その事態に思考が追いつく前に。その手に無理やり引き込まれたカルロスの身体は、レンガ壁を破壊しながら牢の中へと引きずり込まれてしまった。
 地べたを転げ回り、やがて壁に激突した彼はすでに血だるまと化し――何が起きたのかもわからないまま、自分を玩具にした「手」の持ち主を凝視する。

 その持ち主――赤いマフラーを巻いた黒髪の男は、冷ややかな眼差しでカルロスに歩み寄り、その胸倉を掴み上げる。カルロスの細身は腕一本でふわりと持ち上げられ、彼は苦悶の表情を浮かべた。
 当たり前だが、こんな男は仲間達の中にはいない。だが、牢の中にこの男がいたということは、噂の王国騎士が彼だったことを意味する。
 つまり、アーマドが捕まったという情報は、ブラフだったのだ。

「……作戦、とは言い難い分の悪い賭けだったが。どうやら吉と出たらしいな」
「て、テメェは一体!?」
「元王国騎士、といったところだ。お前達奴隷商の仲間に、王国製の鎧を着た奴がいると聞いてな。同じ格好の人間が捕まれば、仲間が捕まったと勘違いする可能性に賭けたんだ」
「……!」
「お前達は存在そのものがご法度。そのアジトを隠し通すためなら、仲間殺しも辞さない連中だ。それに話によれば組織は数十人規模。それだけ人数がいるなら、例え途中で勘違いが解けたとしても、正確な情報が全員に伝わる前に誰かは『口封じ』に来るはず。この世界にLINEでもあれば、違っただろうがな」
「ラ、ライン……? なんだそ――ぐっ!」

 胸倉を掴む手に、さらに力が篭る。これ以上の問答に付き合う気は無い――と暗に宣告する男に、カルロ
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