断章 生還のグラディウス
第3話 小さな勇気
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の悍ましい光景に、少女――リコリスは、声にならない悲鳴を上げる。
そうして男達の影が彼女の身体を覆い尽くし、肉の宴が幕を開け――るはずだった。
「大変だお頭ァァ! アーマドの野郎が捕まりやがった!」
「……なにィ!?」
その寸前に響く声に、リーダーの唸りが反響する。報告に駆け付けた男の発言内容に、他の野獣達も騒ぎを忘れて立ち尽くした。
「街の連中が噂してたんだ! 今日、王国騎士の鎧を着た野郎が捕まったらしい!」
「なんだと!? くそッ、アーマドのグズ野郎ッ……!」
「まずいぞお頭! 帝国騎士の尋問でここがバレたら……!」
「アーマドが上手く逃げてりゃいいが……見てこいカルロス! もし奴がまだ生きて街に居たなら、口を封じろ!」
「りょ、了解ッス!」
リーダーの怒号を受け、カルロスと呼ばれた細身の男が素早く走り出す。その背を見送る男達は、リコリスを嬲ることも忘れてどよめきに包まれる。
「どうすんだよ……もしアーマドの奴がここを喋っちまったら……!」
「おい! その話はいつ聞いた!?」
「昼下がりだが……今夜には取り調べが始まるって聞いた……!」
「まずいな……もう外は夕方だ。早く手を打たねぇと……!」
口々に今後の動きを話し合うならず者達。そんな彼らを一瞥し、リーダーは歯を食いしばる。すでにその手は、背にした大槍に伸びていた。
「アーマドの野郎……死んでいようが生きていようが、今度会ったらそのツラをブッ刺して――」
「――あっしがどうかしやしたか?」
「あ?」
その時。野獣達が集まる空間に、鎧を着た醜い男がひょっこりと顔を出してきた。
無精髭にダルマのような体型を持つ彼は、古びた王国製の鎧を鳴らし、のっしのっしと歩み寄る。
そんな彼の姿に、リーダーを含む誰もが目を点にして固まっていた。
「お、おいアーマド。お前、街で帝国騎士に捕まったんじゃ……」
「は? あっし、今日は街になんて行ってないでやんす。今日はちょっと遠くまで食料を狩りに――」
「――カルロスを呼び戻せ! 奴らこれが狙いだッ!」
だが。本人が目の前に確かに存在し……行方不明だった本人が、こう発言している。その紛れもない事実が、リーダーに全てを悟らせた。
「くそッ! よりよって、俺達の中でもぶっちぎりで足の速いカルロスか……! 馬車を出せ! 最悪、戦闘にもなるかも知れん! 選抜隊は速やかにカルロスを呼び戻せ! 残りは戦闘準備だ!」
「え、え? な、なにがどうなってるでやんす?」
そこから矢継ぎ早に飛び出す命令を受け、男達は一転して慌ただしく駆け回り出した。その騒ぎに取り残されたリコリスは、状況が見えないまま目を伏せ――ただ静かに祈る。
(あぁ、勇
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