断章 生還のグラディウス
第2話 地方都市の来訪者
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に当て、和やかな笑みを浮かべる。
そんな彼の反応を侮辱と受け取ったのか、少女はさらに眉を釣り上げた。
「んなっ! 今笑ったわね! あたし達リコリス親衛隊を舐めてると、痛い目に遭うわよ!」
「ふふ、そうだな」
「だ、だめだよミィ、刺激したら危ないよ!」
ミィの可愛らしい怒声を浴びながら、騎士はくすくすと微笑むばかり。そんな彼にいきり立つ彼女を、ポロが懸命に宥めていた。
「通報を聞いた! お前が件の王国騎士か!?」
「騎士団のみんな、あいつだよ! リコリス様を攫った犯人!」
すると、数人の帝国騎士が双角の兜を揺らして駆け付けてくる。そのそばを懸命に走るカインが、赤マフラーの騎士を指差した。
その様を見つめる騎士は――まるで抵抗する気配を見せず、彼らの前に進み出た。
「……? とにかく、詰所で貴様の身柄を預からせてもらう。無駄な抵抗はするな」
「わかってますよ。あ、お手柔らかにお願いしますね」
「黙れ! さっさと歩け!」
そんな彼の様子に訝しみながらも、帝国騎士達は予定通りに取り調べに移るべく、騎士から鉄製の剣と盾を取り上げ、手錠をかける。
そうして連行されるまでの間。最後まで何も行動を起こさなかった彼を、三人組は暫し呆然と見送っていた。
「ね、ねぇカイン。結局あの人、最後まで何もしなかったね……。やっぱり事件とは関係ないんじゃあ……」
「バカ、そんなわけないだろ。事件と関係ない奴があんなカッコでこの街に来るかよ。きっと暴れるのがカッコつかないから、負け惜しみで余裕ぶってんだ」
「きっとそうね。あ、もしかしたら何か隠してるのかも知れないわ! 追いかけて見張ろうよ!」
「だな! よぉし、リコリス親衛隊、出動っ!」
「ちょ、ちょっと二人とも待ってよ〜!」
だが、結局疑念が晴れたわけではなく。さらに何かを隠してるのではと勘ぐった三人組は、帝国騎士達を追っていく。
そんな彼らの駆け足を、黒髪の騎士は肩越しに見つめていた。
◇
帝国騎士の詰所にある、レンガ製の牢屋。その中に閉じ込められた騎士は、鎧も剣も盾も没収され、青い服一着と赤マフラーだけの姿で佇んでいた。
壁にもたれかかりながら腕を組み、鉄格子に阻まれた窓から外を見やる彼。そこへ――カインと呼ばれた少年が踏み込んでくる。
「へへ、ざまぁねぇな! さぁ観念してリコリス様の居場所を教え――あだだだ!」
「ガキはとっとと帰れ! ――それと貴様、ダタッツと言ったな。今夜には隊長が平原の巡回を終えて戻られる。貴様への尋問はそれから行うから、それまで大人しくしていろ。いいな」
……すぐさま帝国騎士に耳をつねられたが。
若い騎士はダタッツという黒髪の男を訝しげに睨み、今後の予定を告げて立ち去って行く。その
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