暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
断章 生還のグラディウス
第2話 地方都市の来訪者
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については身に覚えが全くない。

「そうだ! 奴らの怪しい影を見た父ちゃんが言ってたんだ、奴らの中に王国製の鎧を着た奴がいたって!」
「……」
「あんたなんでしょ、リコリス様を攫った悪い奴は! 観念してリコリス様を返しなさい悪党!」

 だが、自分がいきなり奴隷商の手先呼ばわりされた理由は思いの外、早く発覚した。事件当初からあった目撃情報を頼りに、当たりをつけていたのだ。

(……やはり、そう見るか)

 一角獣を模した鉄兜。青く縁取りされた白銀の鎧。ライトブルーのインナー。首に巻かれた赤いマフラーを除く全てが、彼が王国騎士であることの証左となっている。
 王国騎士を格好をした一味の仕業、とだけ聞いている少年達が疑いの目を向けるのも、無理からぬことであった。

 よく周りを見渡してみれば、街の誰もが遠目に自分を見ながら、ヒソヒソと言葉を交わしている様が伺える。三人組が声を張る前から、この奇異の視線は騎士に降りかかっていた。

(……この時期に、この辺りをうろつく王国騎士などそうそういない。そんな格好をしてる奴が、白昼堂々街中に現れれば、こうなるのも当然か)

「ね、ねぇカイン、ミィ。や、やっぱやめようよ、勝てっこないよ……。それに、この人が犯人っていう保証だって……」
「なに言ってんだよポロ! リコリス様を見捨てる気か!」
「そうよそうよ! 大人達は全然頼りにならないんだから、あたし達でなんとかしなきゃダメじゃない!」

 そんな中、三人組の中で唯一尻込みしていた丸顔の少年が、二人におずおずと声をかける。だが、金髪の少年と赤い髪の少女は眉を吊り上げ徹底抗戦を訴えた。

「で、でも……」
「でもも何も無い! ミィ、こいつ見張ってろ! オレ、騎士団に知らせて来る!」
「わかったわ!」

 カインと呼ばれた少年は、ミィという少女に指示を送りながら、領主の邸宅がある方向へ走り出して行く。正しくは、その方角にある騎士団の詰所へと。
 その間、ポロという丸顔の少年はずっと彼らを交互に見やり、慌てふためいていた。

(――俺も大人しい方だったから、小さい頃はこんな風だったっけ)

 そんなポロの慌てようを、微笑ましく見守る黒髪の騎士。そんな彼に、ミィの鋭い眼差しが突き刺さる。

「あんた! カインの命令なんだから、大人しくここにいることね! 逃げようったって、あたし達リコリス親衛隊が逃がさないんだから!」
「リコリス親衛隊?」
「ね、ねぇミィやめなよ。僕たち、いつもリコリス様と一緒に遊んでるだけで……」
「黙ってなさいよポロ! 黙ってたらわかりゃしないわ!」
「……くす」

 ミィとポロのやり取りから、彼らがリコリスとどのような関係であり、どのように過ごしてきたかを感じ取った騎士は――拳を口元
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