第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第47話 王国勇者ダタッツ
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
そうして、帝国騎士に新たな時代が芽吹こうとしている頃。
「やはり、行かれるのですか」
「……はい」
王国では、一人の男が新たな旅立ちの時を迎えようとしていた。
青い服に袖を通し、首に赤いマフラーを巻く若者の眼前には――煌びやかな新緑のドレスに身を包む、美しいブラウンの髪を持つ姫君の姿がある。
かつて、この国の騎士だったダタッツ。かつて、この国の姫騎士だったダイアン姫。二人は今、互いに新たな道へと歩み出そうとしていた。
二人の後ろでは、町の人々や騎士達が入り乱れ、破壊された王宮の復興に奔走している。
「あれほど王宮が破壊されたとあっては、国民に全てを隠し通すことも出来ません。ジブンが本性を露わにして暴れていたところを、駆け付けたヴィクトリア様が追い払った――としておくのが、一番の理想でしょう」
「……否定は、できませんわね。事実、民衆は皆、あなたを疑っていた……」
「ダイアン姫。短い間ではありましたが、お世話になりました。ヴィクトリア様が正気に戻られ、王国への帰還を果たした今、ジブンの力はもう必要ありません。今の王国ならば、必ず立ち上がっていける。ジブンは、そう信じています」
「……えぇ。ヴィクトリアもあれから随分、騎士団の指導に精を出しているようですし。もう、わたくしが姫騎士として剣を振るう必要もなくなってしまいましたわ」
――あの死闘の後。
治療を受けたダタッツが意識を回復させた頃には、すでに数日が経過していた。戦いで破壊された王宮は、有志の民衆や騎士団の手で復興が進められ、バルスレイがその指揮を執っている。
それと並行して、騎士団ではヴィクトリアによる激指導が始まり、団員達は来る日も来る日も彼女のシゴキに悲鳴を上げる羽目になっていた。
そんな彼女の手には今、父の形見である両手剣が託されている。
一度は持つ資格がないからとダタッツに譲ろうとしていた彼女だったが、彼自身の「その剣で人々を守って欲しい」という頼みに応じ、今では父の形見に見合う騎士になることを目指し、騎士団をシゴく傍ら、自らにも苛烈な修行を課している。
また、ヴィクトリアによる猛特訓に、唯一弱音を吐くことなく耐え続けているロークは、既に弱冠十四歳の若さで小隊長の座を掴んでいる。
ダタッツが騎士団に入ってから今日に至るまでの短期間で、飛躍的に実力を上げた彼女に注目している人間は非常に多く、一部では次期団長になるとも噂されていた。
一方、あの死闘でダタッツの右腕を治すために魔力を使い切ったダイアン姫は、自身の両腕に後遺症を残すことになり――剣を振るえない身体となってしまった。以来、彼女は病床の父に代わりこの国を治めるべく、政を学んでいる。
結果として、彼女の身体には消えない傷が残ることとなったの
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ