第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第47話 王国勇者ダタッツ
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
だが――今の彼女は、憑き物が落ちたように笑顔を多く見せるようになり、その美しさに見惚れる者達が続出するようになっていた。
――そうして、少しずつこの国が前に進んで行こうとしている、この時に。
ダタッツは、王宮破壊の罪を被る形で――この国を立ち去ろうとしているのだ。
「とにかく、国民にそう発表した以上、ジブンがここにいるわけには参りません。では、達者で――」
「――お待ちください!」
踵を返し、短い挨拶だけを残して立ち去ろうとするダタッツ。その手を握り、引き留めるダイアン姫の眼差しは、かつてないほどに熱い。
それが女の顔であることを察するダタッツは、無言のまま彼女の様子を伺う。伝えたい言葉がある、と言いたげな彼女が、勇気を振り絞る時を待つために。
だが、出てきた言葉は。
「あなたの、その旅に……このダイアンも、お供しとうございます。わたくしも、連れて行って頂くわけには――参りませんか?」
「ダイアン姫……」
ダタッツの予想を、大きく超えるものだった。剣も盾も失い、姫騎士を引退して父の政治を支えるようになった彼女。
今、ダイアン姫が王国を抜けてしまえば、ただでさえ不安定なこの国が、さらに傾いてしまう。 彼女の発言は、王女としての責任を放棄しているようなものだ。
「……それは、不可能です。あなたは、この国にはなくてはならない方。今の王国には、あなたの力が必要なのです」
「そんな……ひどい」
「あなたの、そのお気持ちだけは――有り難く、頂きます」
ゆえに、多少冷たく突き放すことになろうとも。ここで彼女の想いを受け取るわけにはいかない。
ダタッツは彼女と目を合わせないよう顔を伏せ、立ち去ろうとする――が。
「ふ……ふふふ」
「……?」
ダイアン姫の、笑いを堪えるような声に、思わず振り返ってしまう。その視線の先には、悪戯っぽい笑みを浮かべる年相応の少女の姿があった。
「ダタッツ様ったら、今の言葉を真に受けるなんて。本当に単純なのですから。そんなことでは、いつか悪い女に騙されてしまいますわよ?」
「……それは、あなたではありませんか。冗談が過ぎますぞ」
「――冗談では、ありませんわ。あなたをお慕い申し上げているのは、本当です」
「……!」
からかうような笑みから一転し、真剣な眼差しを見せるダイアン姫。一途なその瞳に、ダタッツも目の色を変える。
「ですが――あなたが仰る通り、わたくしは王女としてこの王国を支える柱とならねばならない。きっと、これを叶わぬ恋と呼ぶのでしょう」
「……」
「だから――せめて。わたくしだと思って、持って行って頂きたいものがありますの」
「……?」
すると、ダイアン姫は視線を後方へと移し――その先から、ヴィクトリア
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ