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ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第47話 王国勇者ダタッツ
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だが――今の彼女は、憑き物が落ちたように笑顔を多く見せるようになり、その美しさに見惚れる者達が続出するようになっていた。

 ――そうして、少しずつこの国が前に進んで行こうとしている、この時に。
 ダタッツは、王宮破壊の罪を被る形で――この国を立ち去ろうとしているのだ。

「とにかく、国民にそう発表した以上、ジブンがここにいるわけには参りません。では、達者で――」
「――お待ちください!」

 踵を返し、短い挨拶だけを残して立ち去ろうとするダタッツ。その手を握り、引き留めるダイアン姫の眼差しは、かつてないほどに熱い。
 それが女の顔であることを察するダタッツは、無言のまま彼女の様子を伺う。伝えたい言葉がある、と言いたげな彼女が、勇気を振り絞る時を待つために。

 だが、出てきた言葉は。

「あなたの、その旅に……このダイアンも、お供しとうございます。わたくしも、連れて行って頂くわけには――参りませんか?」
「ダイアン姫……」

 ダタッツの予想を、大きく超えるものだった。剣も盾も失い、姫騎士を引退して父の政治を支えるようになった彼女。
 今、ダイアン姫が王国を抜けてしまえば、ただでさえ不安定なこの国が、さらに傾いてしまう。 彼女の発言は、王女としての責任を放棄しているようなものだ。

「……それは、不可能です。あなたは、この国にはなくてはならない方。今の王国には、あなたの力が必要なのです」
「そんな……ひどい」
「あなたの、そのお気持ちだけは――有り難く、頂きます」

 ゆえに、多少冷たく突き放すことになろうとも。ここで彼女の想いを受け取るわけにはいかない。
 ダタッツは彼女と目を合わせないよう顔を伏せ、立ち去ろうとする――が。

「ふ……ふふふ」
「……?」

 ダイアン姫の、笑いを堪えるような声に、思わず振り返ってしまう。その視線の先には、悪戯っぽい笑みを浮かべる年相応の少女の姿があった。

「ダタッツ様ったら、今の言葉を真に受けるなんて。本当に単純なのですから。そんなことでは、いつか悪い女に騙されてしまいますわよ?」
「……それは、あなたではありませんか。冗談が過ぎますぞ」
「――冗談では、ありませんわ。あなたをお慕い申し上げているのは、本当です」
「……!」

 からかうような笑みから一転し、真剣な眼差しを見せるダイアン姫。一途なその瞳に、ダタッツも目の色を変える。

「ですが――あなたが仰る通り、わたくしは王女としてこの王国を支える柱とならねばならない。きっと、これを叶わぬ恋と呼ぶのでしょう」
「……」
「だから――せめて。わたくしだと思って、持って行って頂きたいものがありますの」
「……?」

 すると、ダイアン姫は視線を後方へと移し――その先から、ヴィクトリア
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