第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第45話 王国の夜明け
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『アァ……ヤドリギ、ヤド、リ、ギ……』
黒い影が完全に消え去り、声も聞こえなくなる頃。感涙を浮かべ、自身に寄り添うロークを抱き締め、ヴィクトリアはダイアン姫達に――どこか儚い、微笑みを送る。
「姫様。陛下。遅くなりましたが……ただいま、戻りました」
「えぇ……お帰りなさい、ヴィクトリア」
「よくぞ、帰ってきてくれたな……」
そんな彼女に、ダイアン姫と国王は、優しげな笑みで答え――ヴィクトリアの元へと駆け寄って行く。
ついに、闇を打ち払った王国の人々。そんな彼らの背中を見つめ、バルスレイも肩の荷が下りたかのように胸を撫で下ろす。
「さぁ……ヴィクトリア、下がっていて。ダタッツ様の治療を始めます」
「姫様。その前に御自身の両腕を……」
「大丈夫です。わたくしなど、彼に比べれば遥かに軽傷です」
「そうですか……本当に、強くなられましたね。――愛の力、ですか」
「……か、からかわないで下さい」
「からかってなどおりません。帝国勇者――否、勇者ダタッツ殿ならば……そうなってしまわれても、不思議ではない。今なら、そう思えます」
「もう……」
そして、右腕を失ったまま気を失っている、この国の勇者を見つめ。ダイアン姫は、己の中に眠る神秘の力を、惜しむことなく解き放っていく。
その輝きには、躊躇いも迷いもない。ただ一途に、愛する男を癒す女として。ダイアン姫は、神に許された魔の力を、行使する。
やがて、新緑の光がダタッツの身体を――この空間を包み込み、空にまで届く頃。
王国を包んでいた夜は明け――眩い太陽が、希望を灯すように煌めいていた。
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