第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第44話 ダタッツ剣風
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
人々の平和のために戦わねばならない責任と引き換えに――超人の力を持っているのだから。
そして今まさに、伊達竜正は。その責任を、果たさんとしているのだから。
この世界にただ一つ残る、魔の物を屠ることで。
「あ、あぁあぁああァッ!」
ゆえに。勇者の剣の刀身は、螺剣風の直撃によりさらに亀裂を広げられ――やがて限界を迎え、なまくらの如くへし折られてしまう。
ヴィクトリアが風に飲まれ、遥かな夜空へと舞い上げられたのは、その直後だった。
「わぁあッ!」
「きゃああぁあッ!」
鎧に全身を固めた彼女を、容易に吹き飛ばす激しい風。
その余波は周囲にも及び、ダイアン姫達は自分達も吹き飛ばされないよう、瓦礫や柱に掴まり、懸命に堪えていた。その風に抵抗できる力を持たない国王の身体は、老いてなお堅牢な肉体を保っているバルスレイが保護している。
さらに、この風は王宮の最上階を中心に――そよ風として、城下町にも及んでいた。その町中から、王宮を見つめ続ける少女の頬を、吹き抜ける風が撫でる時。
「……剣の、風……」
自らが慕う騎士の技が生んだ風を思い出し――彼女は頬を濡らして、呟くのだった。
直感したからだ。この風と引き換えに、あの人は命を削っているのだと。
そして。
夜空の彼方から。流れ星の如く舞い降りたヴィクトリアの身体が、鎧で空を切る轟音と共に墜落する瞬間。
「く、あぁあッ!」
片腕のまま、弾かれるように飛び出したダタッツは、彼女の落下地点に倒れ込むと――自分の身体を緩衝材として使い、ヴィクトリアの身を墜落の衝撃から守り切るのだった。
うつ伏せに倒れた彼の周囲に広がる亀裂が、その衝撃の威力を物語っている。
それから数秒の間を置いて――ヴィクトリアと共に風で舞い上げられていた両手剣と、折れた勇者の剣が落下してくる。
その二本が床に突き刺さる時。
この場にいる人間全てが、ついに悟るのだった。
――もう。戦いは、終わったのだと。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ