第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第43話 ロークの勇気
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かった。
それが答えだった。自分達はもう、彼を憎んでなどいない。それを認めてしまうことが怖かったから、冷たく接しようとしていたに過ぎなかった。
自分達にとってもあの騎士はもう、「勇者」だったのだ。
(だから――ヴィクトリア様。オレは、あなたを……!)
その勇者を倒されて。守るべき姫君も、痛ましい傷を負った。こうなった今、騎士である自分のすべきことは明白。
命に代えてもヴィクトリアに打ち勝ち、勇者ダタッツが守ったこの国を救う。
そのためにこそ、彼女は立ち上がり、剣を取るのだ。
「……待、て。君一人に、戦わせはせぬ。私も、加勢するぞ……!」
「なっ……バルスレイ様!?」
「バルスレイ殿か!?」
さらに、思わぬ乱入者がもう一人現れる。城門前でヴィクトリアに倒されたはずのバルスレイまでもが、傷を押してこの最上階に乗り込んできたのである。
全身に痣を残し、文字通りの満身創痍の状況でありながら――その武人としての瞳には、寸分の恐れもない。
「……死に損ないが。よかろう。ならばまとめて、私が連れて行ってやろう。帝国勇者が眠る世界に――な」
「……っ! お願い! お願いヴィクトリア、もうやめて! わたくしの命を差し上げますから……わたくしならいくらでも傷つきますから、もうこれ以上誰かをっ……!」
そんな彼らに対し、ヴィクトリアは苛立ちを露わにして勇者の剣を振り上げる。弐之断不要「破散弾」の体勢だ。
戦える人間が全員、手痛い傷を負っているこの状況で、全方位に瓦礫の砲弾を打ち出されては――もはや、逃れる術はない。
仮に逃げようものなら、間違いなく国王は余波に巻き込まれ命を落とす。
誰もが、万事休すかと。覚悟を決めた。
そんな彼らを冷ややかに見遣るヴィクトリアは、引導を渡すように勇者の剣を振り下ろし……。
「飛剣風ッ!」
「ぐッ……!?」
どこからともなく、風を切るように吹き抜けた一本の剣に、その豊かな胸を撃ち抜かれた。
彼女を撃った剣――アイラックスの両手剣は重鎧で全身を固めたヴィクトリアの身体を容易に跳ね飛ばし、反動で大きく跳ね返る。
そして、空中で激しく回転していたその巨大な剣は――黒髪の騎士の手元へと収まるのだった。
胸に十字の傷を刻まれ、服の色とも血の色ともつかない赤色に全身を染め上げ――それでも。黒い瞳はその奥に希望を灯し、ヴィクトリアを射抜いている。
さながら、魔王に立ち向かう勇者のように。
「ダタッツ……!」
「勇者、ダタッツ……」
「ダタッツ様っ……!」
その姿に、ロークと国王は感嘆の声を漏らし――ダイアン姫は感情のままに美しい顔をくしゃくしゃに歪め、すすり泣く。
そして。
「……まだ、生
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