第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第43話 ロークの勇気
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限の動きでそれを回避したヴィクトリアは、小虫を払うように裏拳を放つ――が、ロークは空中でキックを真横に放ち、その拳を止めて見せた。
「……!」
その反応の速さに、ヴィクトリアが思わず目を剥く瞬間。ロークは裏拳を放った彼女の腕を足場に、さらに高く飛び跳ね――彼女の頭上に、全体重をかけた一閃を振り下ろすのだった。
「弐之断不要もどきぃぃいいぃっ!」
巨大な一角を誇る蒼い鉄兜に、少女騎士の渾身の一撃が炸裂する。
だが、ヴィクトリアは微動だにしない。不意を突かれて微かな隙を見せはしたが、ロークの一撃を物ともせずに反撃に転じる。
この王国の最上級騎士の証である、一際大きい鉄兜の一角。その得物で突き上げるように――彼女はロークの小さな体を跳ね飛ばしてしまった。
「うぁああぁっ!」
「ロークっ!」
幼い少女にさえ容赦のない攻撃を加えるヴィクトリア。その冷徹な攻撃を目の当たりにして、ダイアン姫は腕の痛みも忘れて悲鳴を上げる。
少女騎士の体は天井があった高さよりも大きく跳ね上がり、力無く地面へと墜落していく。
その鈍い衝撃音がこの場に響く瞬間、ダイアン姫は目をつぶり顔を背け、ヴィクトリアは終わったと言わんばかりに踵を返した。
「あ、あぁ……ローク……!」
「ヴィクトリア、お主……!」
かつての教え子にも手をかけるヴィクトリアの変わり果てた姿に、国王は歯を食いしばる。王国のために立ち上がった帝国騎士団と帝国勇者が倒れ、愛娘も両腕を負傷し、唯一残った正規団員も激しく痛めつけられた。
それをやったのが、旧知のアイラックスの忘れ形見だという事実が、国王の心に重くのしかかる。
同時に、絶望も襲い掛かった。もう、希望はないのだと。
「……ま、だ、だっ……!」
――だが。この国の主が、そう感じていようとも。諦めずに立ち上がる者がいた。
この小さな体のどこに、そんな力があるのか。その姿を見る人々全てが、そう感じているほどに――ロークは猛々しい炎を瞳に宿し、両の足で立ち上がっている。
足元はふらつき、視線も定まらず。兜の内側から滴る赤い筋が、彼女のダメージの深さを物語っている。
「ローク、だめ! 下がって、下がりなさい!」
「いかん、ローク! 逃げるのだ、今度こそ殺されるぞ!」
もはや戦える状況にないことは、誰の目にも明らかだった。しかし、それでも彼女はがむしゃらに、ヴィクトリアに向かって行こうとしている。
悟っているからだ。例え勝ち目などなくとも、騎士であるからには戦わねばならない時があるのだと。
(父上が、そうだったように……!)
父を奪った帝国勇者は倒された。だが、自分もダイアン姫も国王も。仇が討たれたにも拘らず、誰一人喜びはしな
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