第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第42話 想い
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わかると!」
「今、あなたが苦しんでいること! わかることなどそれで充分です!」
そして、その問答を最後に――ダイアン姫の気勢は限界まで高まり、放出する瞬間を迎える。
「だからわたくしが――あなたを目覚めさせるッ!」
「――出来ますかな」
リスクを度外視した、捨て身の弐之断不要。それを迎え撃つ、ヴィクトリアの弐之断不要。
双方が、交わる時。
その余波が、人々を際限なく巻き込んで行った。
彼女達の同質の剣技が激突した瞬間――衝撃のあまり天井が吹き飛び、王室は月明かりの下に晒されてしまった。ロークは盾で懸命に国王を守りながら、勝負の行方を見極めるため、土埃の向こうを見つめる。
「姫様! 姫さ、ま……」
そして――言葉を失うのだった。
一方。弐之断不要の衝撃により吹き飛ばされ、瓦礫と化して王宮前に墜落した天井部分は、下にいた騎士達を大混乱に陥れていた。
「うわぁああ! なんだ、何がどうなってるんだ!」
「姫様は無事なのか!? 陛下は!?」
「と、とにかく逃げろ! ここにいたらぺしゃんこだ!」
右往左往し、逃げ惑う王国騎士団。彼らは瓦礫の下敷きにされた一人の予備団員に気づくことなく――王宮から方々に散って行く。
その予備団員は……瓦礫の中で流血している状態のまま、目の前の光景を見つめていた。
(……今ならわかる。あの時、なぜ技が二度も外れた――いや、外したのか)
予備団員――ダタッツは、虚ろな瞳で逃げ回る騎士団員達を見つめる。その情けない背中に、自分自身を重ねるように。
(俺は……この戦いの中で。いや、それよりもずっと前から……死にたかったんだ)
それが答えだった。
自分自身ですら気付けなかったそれこそが、彼の本心だったのだ。
自害など償いにはならない、死ぬことなど逃げに等しい。そう自分に言い聞かせていながら、心の奥底では死により楽になることを望んでいたのだ。
かつての自分と重なるヴィクトリアを前にして、罪の意識を抉り出された彼は、無意識のうちにその本心を引き出し――彼女に殺されようとしていた。
本来、勝てる相手だったというのに。
(やはり……俺が勇者をやろうなんて、おこがましかったんだ。そんなことに気づくのに、六年もかけて……)
この土壇場で、この世から逃げようとする。そんな自分の浅ましさを改めて思い知り、ダタッツは失意のまま瞼を閉じる。
元の世界でもこの世界でもない、現世から離れた場所へと立ち去るように。
(すまない、ローク君。ハンナさん、ルーケンさん、バルスレイさん、国王陛下。フィオナ、皇帝陛下、ダイアン姫――ベルタ)
勇者どころか、人として失格。そう感じたダタッツの意識が、闇の中へと消え
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