第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第40話 王宮の死闘
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るダタッツは、その手応えから防がれたことを悟る。武器庫内を照らしていた蝋燭の火を全て消し、入念に奇襲の準備をしていたというのに――その目論見は、容易に破られてしまったのだ。
そこから……ヴィクトリアの怒涛の反撃が始まる。絶叫と共に振るわれる斬撃の嵐に、ダタッツは防戦一方となり、彼の足は武器庫から王宮の入り口へ、入り口から階段へと後ずさって行く。
だが、彼女の攻撃の手が緩むことはない。激しい連撃でダタッツを追い詰める彼女は、階段を駆け上がりながら剣を振り続けていく。対するダタッツも、剣と盾で懸命に彼女の猛攻を凌ぎながら、階段を跳ぶように上がって行った。
――もう、戦いの場を選ぶいとまはない。黒髪の騎士は勇者の末裔に追われるがまま、王宮の上層へと上がっていく。
その道中、自分に不安げな視線を送る姫騎士の姿が目に入り――彼の胸中はさらに影を帯びて行った。
やがて、永遠のように続いていた階段の道は終わりを迎え、水平な足場で二人は剣を交えた。階段という不安定な場所から解放されたヴィクトリアは、さらに攻撃の激しさを増し、ダタッツに襲い掛かる。
一方。壁を背に、懸命にそれを凌ぐダタッツは険しい表情で防御に徹していたが……もはや、限界であった。
強烈な斬り上げで盾と剣の防御体勢を崩された彼は、腹に正面蹴りを受けて吹き飛ばされてしまう。だが――今度突き破ったのは、壁ではなかった。彼が背にしていたのは、実は壁ではなく――
「やはり、来てしまったか……」
「国王、陛下……! しまった、ここは……!」
――王宮の最上層に位置する、国王の寝室であった。
床に就く彼の背後に飾られた、アイラックス将軍の両手剣を見遣り……その娘は一瞬だけ眼に光を取り戻すと、闇の中から助けを求めるような声を漏らす。
「父、上……」
『チダ……チガモウスグ……モウスグダ……』
その一方で。勇者の剣に宿る邪気は、狂喜に満ちた声色で、血を渇望するのだった。
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