第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第39話 運命の対決
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手を上げて喜んでいたに違いない。――彼女の手に、勇者の剣がなければ。
「違う……違うよ、そんなのっ……」
「そこまで拒むというなら……お前にも一度、味あわせておくべきか。真の力が、如何程のものかを」
ダイアン姫の説得にも耳を貸さなかった、とは聞いている。もとより説得で解決できるとは期待していなかった。それでも、かけがえのない存在であるヴィクトリアの変わり果てた姿には、ショックを隠し切れないでいた。
――すると。
「どく必要はないさ。彼女に破散弾が当たることは、万に一つもない」
澄み渡る青年の声に、ロークはふと顔を上げる。見上げた先には、月明かりを背に浴びながら穏やかに微笑みかける、美しい黒髪の騎士がいた。
吸い込まれそうな黒い瞳に見つめられ、少女騎士の鼓動が微かに高鳴る。次いで、それを感じた彼女自身は彼に悟られまいと、慌てて視線を逸らしてしまった。
「……おせぇよ、いつまでチンタラしてたんだ」
「悪かったよ。ちょっと、忘れ物を取りに戻っててね」
「忘れ物? ……あっ!?」
すると、彼女の前に愛用の短剣が差し出された。それは本来、戦いに出向く騎士が必ず携行しなければならない得物であるはず。
今の今まで、自分が丸腰だったことに気づかなかったロークは、らしくない自分のミスに驚愕していた。
「剣なんかに頼らなくたって、ヴィクトリア様ならきっとわかってくれる。心のどこかでそう信じていたから、無意識に剣を持たずに飛び出しちゃったんだろうね」
「オ、オレは……」
「――ジブンも、叶うならそれが一番だと思っている。残念ながら、君の思うようには行かなそうだけど……安心していい。決して、君の剣をここで振るわせたりはしない」
家族のように育ってきた少女騎士の切ない願いを、容赦なく踏みにじる勇者の剣。その刀身に纏われた邪気を睨み据え、黒髪の騎士――ダタッツは静かに、剣を抜く。
「ついに現れたな。とうとう、この日がやってきた」
「……」
「――帝国勇者。貴様さえ討てば、父とこの国の無念も晴らされよう。そして姫様やロークも、お喜びになるに違いない。……諸悪の根源を、今ここで絶たせてもらうぞ。かつて貴様が振るった、この勇者の剣でな!」
そんな彼の姿を見据えた瞬間、ヴィクトリアは瞳に炎を滾らせ、勇者の剣を再び振り上げる。今度こそ、容赦のない破散弾を放つつもりだ。
それを察した王国騎士団は悲鳴とともに武器を投げ捨て、方々に退散して行く。まるで、蜘蛛の子を散らすように。
だが、ヴィクトリアはそれに気を留める様子も見せず、ただ静かにダタッツを睨みつけていた。もはや彼女にとって、帝国勇者以外の敵など眼中にないのだろう。
「……一つだけ間違ってるよ、ヴィクトリア。ジブンを討てば、確か
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