第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第38話 弐之断不要の威力
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騎士でありながら、敵に回ったヴィクトリア。帝国騎士でありながら、味方に付いたバルスレイ。どちらを心から応援すべきなのか、迷っているのだ。
「……来い」
一方。ヴィクトリアは、何が来るのかわかっているらしい。勇者の剣で防御の姿勢を取り、静かにバルスレイの出方を伺っていた。
もはや、奇襲など通じない。あるがままに一撃を放ち、打ち勝つ他ないのだ。
「小細工無用か……結構!」
バルスレイの眼光が鋭さを増し、手にした剣が唸りを上げる。
「ヴィクトリア。貴殿を、あの子のところへ行かせはせんぞッ!」
空を裂き、撃ち放たれた飛剣風。その一?の風が、矢と化した剣と共に、ヴィクトリアに向かい吹き抜けて行った。
――そして。
「なっ……にぃ!?」
「そんな……!?」
眼前の光景に――老将と姫騎士は驚愕し、目を剥いた。歴戦の経験を持ってしても、今の彼女の行動を読むことはできなかったのだ。
「――こんなものなのか。父を殺めた、帝国式投剣術とは」
ヴィクトリアは防御の構えを解くと――籠手で飛剣風を『掴んで』しまったのである。まるで、宙を舞う羽根をさらうかのように。
老いさらばえたとはいえ、帝国式投剣術を極めた剣士の一閃は――全く通用しなかったのだ。
(かわされたことならある。防がれたこともある。だが、掴まれたことなど今まで一度も――ッ!?)
さらに彼女は無言のまま、返してやると言わんばかりに剣を投げ返してきた。――バルスレイの飛剣風を、上回る速さで。
「――うぐわぁああッ!」
「バルスレイ様っ!」
老将と姫騎士の悲鳴は、同時だった。バルスレイの肩口に突き刺さった剣は血飛沫を上げながら、持ち主の身体を紙切れのように吹き飛ばして行く。
「まだだ。我が王国が……父上が受けた痛みは、この程度では到底贖えぬ」
すでに老将の状態は、戦闘不能に等しい。だがヴィクトリアに攻撃の手を緩める気配はない。ゆらりと歩み寄る彼女の眼は、憎悪と敵意に染まり、敵の血を求めている。
「そこまでですヴィクトリア! 剣を捨てなさい! それは、あなたが持つべきではありません!」
その光景を見せ付けられ――見たことのないヴィクトリアの表情を目の当たりにして。ようやく姫騎士は決意を固め、彼女の前に立ちはだかった。
姉のように慕ってきた相手とはいえ、話が通じる望みは薄い。万が一に備え、左手に装備した盾を突き出していた。
「……もう一度申し上げます。お下がりください、姫様。今、奴の息の根を止めますゆえ」
「……そんな眼をしたあなたなど、見たことありませんし、見たくもありません。これ以上その剣を振るうおつもりならば、わたくしもこの剣を抜かざるを得ませんよ」
「この眼を見た
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