第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第34話 追憶を終えて
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く、淡々と話を進めていた。だが、その声色はどこか、ダタッツを気遣うような色を帯びている。
理性を保ったまま、欲望に支配され罪を犯し続ける。その生き地獄は、如何程のものか。この場にいる誰もが、想像出来ずにいた。
国王もまた、その一人なのだ。ゆえに、その闇の中に生きながら、なおも王国のために剣を振るう彼に、情を寄せたのである。
「――よし。城の兵には私から説明する。今のヴィクトリアが勇者の剣に操られているとするなら、何も知らない兵が迂闊に近づき、被害を被るやも知れん。ババルオの魔の手が去り、この国がようやく平和になろうとしている時に、王国人同士で殺し合うようなことだけは何としても阻止せねばなるまい」
「ジブンも同じ考えです、陛下。災いを振り撒いたジブンに、このようなことを口にする資格はないと重々承知しておりますが――どうか今一度、この国の人々のために戦わせて頂きたい。一つでも多くの、笑顔を守るために」
「うむ。アイラックス亡き今、人智を越えた超然の存在から力無き民を守れるのは、現代の勇者たる貴殿しかいまい。――今こそ、伝説通りの勇者として、その剣を振るって欲しい」
「――仰せのままに」
その心に触れた青年は、静かに――そして熱く。国王と約束を交わし、王国のために立ち上がる決意を、新たにしていた。
そんな彼の力強い瞳を見遣り、国王は神妙な面持ちを浮かべる。
(勇者の敵が勇者の剣とは――なんとも皮肉なものよ。恐らくは先代の勇者も、正義の心を以て剣を振るったのではなく……魔王以上の邪気を纏い、魔の者共を飲み込んだのだろう)
彼の眼前に映る青年は、人類に牙を剥いた悪の勇者と恐れられている。しかし、その評価は彼という一人の勇者としての「過程」でしかないのかも知れない。
現代に生き残った、ただ一つの闇を切り裂くための剣。それが、彼であるならば。――国王は、そう考えていた。
(魔王が倒れ、魔物が地上から消え去った今の時代において、唯一残されている邪悪な力。それが勇者の剣であるなら……彼は、その最後の闇を打ち破るため、神より遣わされたのかも知れないな)
――そして、ヴィクトリアの動きを警戒しつつ様子を見るという方向で、この件の話は纏まり。この場は解散となるのだった。
ロークは女性団員の兵舎へ。バルスレイは王宮近くの来賓館へ。ダタッツは予備団員用の詰所である小屋へ。それぞれの帰る場所へと、立ち去って行く。
そうして王室に残された国王とダイアン姫は、共に窓から伺える夜空を見上げていた。空に広がる星々は、鮮やかに闇の景色を彩っている。
「……お父様。帝国勇者を憎む、わたくしの感情は――間違っているのでしょうか」
「そんなことはない。彼の思いがどうであれ、彼の振るう剣が王国の民を苦しめたことは事実。彼も
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