第二章 追憶のアイアンソード
第33話 流浪の剣士ダタッツ
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頭上を取り、残りを仕留めるか……)
まだ盗賊達はバルスレイに気付いていない。この隙を突けば、労せず彼らを無力化できる。
そう踏んだ老練の武人は、自らが現世に復活させた、帝国の秘剣を構える。――帝国式投剣術、飛剣風の構えを。
だが。
その一閃が、この戦いで放たれることはなかった。
「ぐはぁっ!?」
バルスレイが飛剣風を撃つ直前。馬車の上から旅芸人達を脅していた盗賊の一人が……突然悲鳴を上げ、のたうちまわったのだ。
その膝には――擦り切れた銅の剣が、突き立てられている。
「……ッ!?」
予想に反した事態に直面し、バルスレイは飛剣風を放とうとしていた手を止める。自分の眼で見切れない速さで、剣を投げつける。
そんな所業が出来る戦士など、彼が知る限りでは一人しかいない。
「やはり、そうか……!」
この状況から、バルスレイはある人物の登場を予測し――その直後に的中させる。
黒い髪。青い服。赤いマフラーに、古びた木の盾。
その少年が馬車の上に突如舞い降り、盗賊の膝から引き抜いた銅の剣で、もう一人を一撃で叩き伏せた時。
バルスレイは、戦闘中であるにも拘らず――我が子の無事を確かめたかのように、破顔した。
勇者タツマサは、やはり生きていたのだと。
「てめぇ!」
「まだ護衛がいやがったのか!」
一瞬にして馬車の上に陣取っていた二人を倒した少年に、盗賊達は怒号を上げて襲い掛かる。だが、近接戦闘においては高い位置に立つ者の方が遥かに有利だ。
少年は落ち着き払った様子で、馬車の上に登ってくる男達を、各個撃破で打ち倒して行く。
だが、多勢に無勢という言葉もある。一斉に前後から挟み撃ちにされては、いかにこの少年といえど剣一本では切り抜けられない。
彼は素早くそう判断すると、馬車の下へくるりと回転しながら飛び降り、颯爽と着地した。
そして今度は、盗賊達が頭上となる。その好機にほくそ笑む彼らは、高笑いを上げながら、一気に少年目掛けて飛び掛かった。
――だが、それは少年の術中だったのだ。彼には「高所に立てば勝ったも同然」という、近接戦闘のセオリーを破る対空剣術があるのだから。
「……飛剣風ッ!」
「ぐわぁあぁあッ!?」
「ぎゃあぁあッ!」
間髪入れず、少年は超高速の投剣術を放ち、策に嵌まった盗賊達を風圧で一掃する。吹き荒れる剣の風がならず者を切り刻み、鳥を射抜くように撃ち落として行った。
――少年がこの場に現れて、僅か一分。それだけの時間で、十三人の盗賊達は全員打ちのめされてしまうのだった。
突然現れた少年剣士のあまりの強さに、守られていた旅芸人達は唖然としていた。
「おぉ……」
さらに彼を指導して
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