第二章 追憶のアイアンソード
第32話 過去との決別
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凍える日々に、立ち戻るように。
(俺は……俺のままでは。誰にも、償うことなどできない。たった一つの笑顔のために、戦うことさえ、許されない)
誰もいなくなった森の道を歩む少年は、昨日まで過ごしていた毎日を思い返す。
戦後の痛みを感じさせない、溌剌とした村人達。厳しくも温かい、村人達の父とも言うべき村長。
そして。臆病でありながら、誰よりも優しく、眩しい笑顔で皆を癒していた――
(――あの笑顔を守る資格など、俺には最初からなかった。それは、こうなる前からわかっていたはずだ。なのに……!)
その笑顔を見られないまま、終わってしまった。いくら頭でやむを得ないと理解していても、温もりを求める少年の本心が、この結末を嘆いていたのだ。
――死ぬことも。生きて償うことも、叶わない。笑顔のために戦うことさえ、許されない。
少年が伊達竜正である限り。帝国勇者である限り。どのように身を粉にしても、人々の悲しみを背負うことなどできない。
それをこの村に思い知らされた竜正は。
変わらず自分を見下ろす太陽を、視線で追う。その輝きは空を黄昏に彩り、地平線の果てに沈もうとしていた。
そして、この時になり。
少年は――決意したのだ。
(……変わらなくちゃいけないんだ。俺が伊達竜正だから、償えないのなら。俺そのものを、変えなくちゃいけないんだ。全く新しい、自分自身にならなくちゃ……いけないんだ!)
今までの自分を、根本から覆し。十五年に渡る伊達竜正としての人生に、幕を下ろし。
何もかも違う、「ジブン」になることを。
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