第二章 追憶のアイアンソード
第32話 過去との決別
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「……」
村人達が引き下がって行くのを確かめ、竜正はうつ伏せに倒れた狂人達の一人を見遣る。その一人は、微かに指先を震わせていた。
――まだ、動くのか。
その痛ましい様に一瞬だけ目を伏せたのち、竜正は再び銅の剣を振り上げた。少年の目と、狂人の眼光が交錯する。
しかし。
その狂人の瞳は、竜正が戦いの中で見てきた色とは――違っていた。
「あ、ぅぅあ……わ、たし、は……」
「――ッ!?」
もう一度とどめを刺そうとしていた竜正は、その声に耳を疑う。人語を話すことすらできなかった狂人が、「私」と発したのだ。
「なん、と……いう、ことを……」
「おい……!? まさか、正気に戻ったのか!? おいっ!」
その後に続いた言葉を聞き取り、竜正はその現象が気のせいではなかったと悟る。無我夢中で剣を捨て、竜正は焦燥を露わに片膝を着いた。
言葉を発したその狂人は、竜正の呼びかけに反応するように、顔を上げる。その目にはもはや――狂気の色はない。
彼はようやく、あるべき王国騎士の心を取り戻したのだ。
(ショックを与え続けたのが効いたのか……。よかった、これなら他の騎士達も助けられる!)
狂人――だった騎士の様子からそれを確信し、淀んでいた竜正の瞳に光が灯る。ようやく一つ、王国に償うことができるかも知れない。
そんな――甘い夢を見たのだ。
「……殺してくれ! 帝国勇者よ、私を……我らを、殺してくれッ!」
「なっ……!」
そして。それは一瞬にして夢で終わり。
騎士は泣き縋るような声を上げ、悲痛な表情で竜正を見上げた。
そんな彼の様子に、竜正は気づかされてしまう。
――彼らは、狂っていた自分達が何をしたのかを……鮮明に覚えているのだ。
勇者の剣を振るっていた竜正が、そうだったように。
「王国の民を守るべき、我ら騎士団が……ただ死の恐怖から逃れるために、民を手にかけていたとは……! こんなことが、許されていいはずがないッ……!」
「ま、待て! あんた達が狂っていたのは――」
「言うな! 敵に恐れをなし、守るべき民と仲間を見放して逃げ出したことは事実! もはや我らに、弁明の余地などない!」
竜正の言葉に耳を貸さず、騎士は泣き叫ぶように己が犯した罪を悔いる。贖えない罪の重さに、もがき苦しみながら。
一方。様子が変わった狂人の叫びに、村人達は言葉を失っていた。
聞いてしまったからだ。狂気から解き放たれた騎士が発した、「帝国勇者」の名を。
「だ、だけど……」
「……だが。貴殿に折られたこの両腕では、自刃することもできん。帝国勇者よ……貴殿がどのような経緯で、この村の民と暮らしているのかは知らぬ。が、あの時のような邪気を持たぬ今の貴
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