暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第二章 追憶のアイアンソード
第32話 過去との決別
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殺られて、黙ってられるかってんだ!」
「俺だってお袋と妹を殺された! 奴らに一泡吹かせなきゃ、やるせねぇよ!」
「行こうぜ村長、みんなの仇を取るんだ!」

 彼の最後の意思確認に、捜索隊の面々は威勢良く声を上げる。皆、純粋にこの村のため、命を投げ出す覚悟を持っていた。
 もう、得体の知れない敵に震えていた、あの夜とは違う。

「……聞いての通り。皆、村のために命懸けで戦う所存だ。君が一番の主力ではあるが、君一人に負担を強いることはない」
「そう……ですか」

 村長はそんな彼らの想いを、竜正に迫るように伝える。

「だから君も。どうかもう一度だけ、我々に力を貸して欲しいのだ。――娘の、笑顔のためにもな」
「……はい」

 まるで、裏切らないよう釘を刺すかのように。

 そんな村長の意図を察したのか、竜正は僅かに強張った面持ちで頷いて見せる。自分のことに気づいているのか――と焦る彼の頬を、冷や汗が伝っていた。

「さぁ、行くぞみんな! 今日こそ奴らを見付け出し、全員捕え――」

 そして。再び踵を返した村長が、捜索隊を鼓舞して前進していく。

 ――だが。

 その足が、門を越える瞬間。

 先陣を切る村長の身体が、あるはずのない影に覆われた。

 次いで――狂気に囚われた幾つもの影が、門の上から降り注いでくる。まるで、雫が滴り落ちるかのように。

 ――死を呼ぶ、冷たい雨となって。

「お父さっ――!」

 刹那。少女の悲鳴が上がるよりも早く。

「飛剣風ッ!」

 その雨を払うように、少年は叫び――飛空の剣を放つ。砂埃を巻き上げ、地から空へ撃ち放たれた銅の剣が、全ての影を蹴散らして行った。

「グガッ!」
「ギァアッ!」

 おおよそ人間のものとは思えない悲鳴を上げ、白マントを纏う人面獣心の狂人達が墜落していく。その光景を目の当たりにして――

「ひ、ひぃいい!」
「奴らだぁあ! 奴らが、村に攻めてきたぁあぁああぁあ!」
「きゃあぁあ!」

 ――村中が、パニックに陥った。
 先程まで周囲を席巻していた歓声は悲鳴に変わり、村全体へ疫病のように伝染していく。
 その影響を受けてか、不意打ちを受けてか。強気だったはずの捜索隊も、戦意を失ったかのように尻込みしていた。

 一方。直接襲撃を受けた村長は、パニックに飲まれることなく。ただ、眼前の光景に目を奪われていた。

「……」

 自分の身に降りかかる殺意の雨。その全てが、空を翔ける剣の一閃に吹き飛ばされて行く。
 その瞬間の光景が、目に焼き付いて離れなかったのだ。

 あの技を放った張本人は、凛々しい面持ちで懐からロープを取り出し、木に突き刺さった己の得物に投げつけている。その隙を狙い、立
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