第二章 追憶のアイアンソード
第30話 呪いの亡霊
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刹那。半狂乱になり喚き散らすベルタの声に隠れ、複数の殺気がこの場に集まろうとしていた。
敏感にそれを感じ取った竜正は、条件反射で腰に提げた銅の剣に手を掛ける。そして――本能に導かれるまま、その切っ先が振るわれた。
「ひあっ!?」
村人の一人――の、背後から現れた黒い影へと。
後ろから村人を斬り殺そうとしていた影の動きは、自身の脇腹に直撃した銅の剣の衝撃により阻止された。
「……ッ!?」
だが、薄汚れた白いマントを纏うその影は、腹に一閃を浴びただけでは倒れず――そのまま破壊された馬車の上へと跳び乗った。
しかし――竜正はそのタフさよりも、自身の手にある銅の剣から伝わってきた「手応え」に、驚愕していた。
(今の感触……! まさか、いや、そんな……ハッ!?)
竜正はどことなく身に覚えのある、その手応えに冷や汗をかいていたが……やがて、近づいてきた新手の気配に気を取られ、思考を中断してしまった。
「な、なんだこいつらぁ!」
「ひぃぃい!」
次々と草むらから飛び出し、馬車の上へと乗り移って行く白マントの男達。フードで顔を隠しているため、素顔はわからないが……その腰に提げられた剣は、王国製のものだった。
「ウゥ……ウ……」
「ァ、アァアア……」
彼らはふらつきながら、低くくぐもった呻き声を上げている。さながら、生ける屍のように。
そんな異様な姿の男達を前に、村人達は震え上がり、尻餅をつく。本能で、この男達が危険であると感じ取ったのだ。
(俺と同じで、戦場から剣を奪ってきたクチか……! この国を守るための剣で、この国の人々を傷付けたってことかッ!)
先程の身のこなしや、竜正の一撃で倒れないタフネス。恐らくは、この者達こそ馬車を襲った襲撃犯なのだろう。
そう悟った竜正は怒りで歯を食いしばり、柄を握る手に力を込める。まるで、かつての自分自身を見せつけられているかのような苛立ちが、彼の感情を揺さぶったのだ。
「あ、あいつらがみんなを……くそったれぇぇえぇえ!」
「いかん! 迂闊に近づくなッ!」
すると、村長の制止を聞かずに村人の一人が、鍬を振り上げて男達に突進し始めた。恐怖や怒りに惑わされた精神が、村人から冷静さを奪ったのである。
男達は自分達に突っ込んでくる敵に対し、雄叫びを上げながら剣を振り上げる。そして、村人の脳天に彼らの一閃が集中する瞬間――
「ぐえっ!?」
――村人に追いついた竜正が後ろから襟を掴み、強引にその足を止めさせた。
その反動で村人は尻餅をつき、自然と頭が低くなる。結果として男達の斬撃は空を切り、村人は一命を取り留めたのだった。
「はッ!」
間髪入れず、竜正は銅の剣を水平に振るう。男達はその一閃を
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