第二章 追憶のアイアンソード
第30話 呪いの亡霊
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―闇に紛れ、彼らの背中を追い続ける一つの影には気づかないまま。
「……! 村長、これは……!」
「む……!」
そして、それから約一刻の時間が過ぎ――道を辿りながら行方を探していた村長一行は、ついに手がかりを発見する。
それは馬車のものと思しき車輪の跡。その軌跡は本来通るべき道からは大きく逸れ、茂みの奥へと向かっていた。
「やっぱり……! ここで何かが起きたんだ、村長!」
「おい、辺りの木を見てみろ! あちこち傷だらけだ! まさか、猛獣に襲われたんじゃあ……」
「ば、ばかなことを言うな! 縁起でもない!」
「じゃ、じゃあまた盗賊が出て来たのか!? 一年以上も出てこなくなったから、この山からいなくなったもんだと思ってたのに……!」
村人達は、その周辺に残された痕跡を次々と発見し、身を震わせる。大きな切り傷が付いた木、踏み荒らされた茂み。それらを見付けて行く度に、馬車が何かに襲われた可能性が高まって行くのだから。
(……違う)
だが、その中で一人。
竜正だけが、現場の痕跡を冷静に見つめていた。彼の鋭い眼差しは、傷つけられた木に向かっている。
(猛獣の爪や牙で付いた傷なら、傷は平行に付いているはずだ。けど、この木の傷は線がみんなバラバラ。……それに、この跡の深さ……。これは、猛獣の仕業なんかじゃない)
猛獣の線が薄いとなると、残る可能性は盗賊。しかし、この山を根城にしていた盗賊は全て撃退したはず。
それ以外の「何か」が、この村に厄災をもたらしたのか……。竜正は、村人達と共に周辺を探りながら、そう逡巡していた。
(……?)
その時。
竜正はふと、捜索を中断して顔を上げ――周囲を見渡した。周りでは村人達が変わらず捜索を続けている。
(気のせいか……? 今、人の足音が一つ多かったような気がしたんだが……)
茂みを掻き分ける時の足音が、今いる人数と一致しない。それに違和感を覚えた竜正だったが、辺りを見回しても、異変は見つけられなかった。
(聞き違い、だったのだろうか……)
竜正はそれに対し、腑に落ちない感覚を抱きながらも、気のせいとして片付けようとする。――が。
「う、うわぁああぁああッ!」
村人の悲鳴が竜正の思考を掻き消し、捜索隊の注目を一箇所に集中させた。声が聞こえた方向は、今いる場所からさらに奥の森であった。
「まさか……!」
その叫びから事態を察した竜正は、最悪のケースを覚悟した上で、声がした場所へと飛び込んで行く。
そして、先に到着した捜索隊が絶叫を上げるさなか、最後に到着した竜正は……悍ましい現実を、目の当たりにするのだった。
馬車……だったものと思しき木片があちこちに散乱し、人の形をした肉塊が壊れた人
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