第二章 追憶のアイアンソード
第28話 帝国勇者の最期
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
た彼の体は、親友のそばに力無く横たわる。
「ロ、ロッコ……! うわぁああっ!」
生まれた頃から、ずっと共に生きてきた友人。そんな彼が、僅か一瞬で動かぬ肉塊に成り果てた。
その事実に押し潰された、最後の敗残兵――ルドルは、悲鳴を上げて森の奥へ駆け出して行く。
「いた! いたぞ、あそこだ!」
「クソガキが、叩き殺してやる!」
彼を見つけた帝国兵達は恐怖に怯えていた表情を一変させ、鬼の形相で茂みに足を踏み入れて行った。
そして、この場の生存者は黒髪の少年一人となり、森には本来あるべき静寂が訪れる。
「……ごめん。ごめんな……」
少年は小さく呟くと、ロッコだった骸の額から自分の剣を引き抜き――開かれた瞼を、優しく閉じさせる。
そして、悲しみに暮れた表情を浮かべながら、帝国兵達を追うように茂みの奥へと進んでいくのだった。
(……一体、いつになったら……終わるんだ)
――やがて少年は茂みの先にある、深い崖へとたどり着く。すでにこの場には帝国兵達が到着しており、彼らは最後の敵を血眼になって捜査していた。
「クソ、どこに行きやがったあのガキっ!――あっ、ゆ、勇者様!」
「げ、現在は残る敗残兵共を捜索しているところでして……!」
「……わかっています。引き続き、捜索の方をお願いします」
自分を畏れるように距離を置く帝国兵達を一瞥し、少年は崖を覗き込む。彼の目に映る闇は、底が見えないほどの深さであった。
まるで――少年の罪を象徴しているかのように。
(あいつが……ロッコを、みんなを……ちくしょう、ちくしょうっ!)
そんな彼の背を、草葉に隠れた敗残兵が狙っていた。茂みに伏せ、帝国兵達に気づかれない位置から少年を狙うルドル。
その手には、傷だらけの銅の剣が握られていた。
(ハンナ……親父……俺に、俺に力を貸してくれ!)
故郷で帰りを待つ家族を想い、ルドルは短剣をより強く握り締める。そして、その切っ先が少年を捉え……太陽の光が、刃に鈍い輝きを与える瞬間。
「わァァァアアアアッ!」
絶叫と共に――ルドルの小さな身体が、茂みの外へと弾き出されて行く。
「なっ、あんなところに!?」
「勇者様、危ないッ!」
その叫びに反応した帝国兵達は、懸命に少年に呼びかける。だが、彼はそれに気づく素振りすら見せず――
「……ッ!」
――悲鳴も上げられないまま。その背に、銅の剣を突き刺されるのだった。
「……ぐ……」
「ハンナァアアアアッ、親父ぃぃいいっ!」
血飛沫を上げる少年の身体はぐらりと傾き、崖の奥へと落ちていく。その後を追うように、ルドルも勢いのまま墜落していった。
一瞬にして、闇の中へと消え去った二人。残った帝国
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ