第二章 追憶のアイアンソード
第28話 帝国勇者の最期
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せて周囲を見遣る。
「ど、どこだ……どこにいやがる!」
表情を引きつらせ、茂みを見渡す帝国兵達。そんな彼らを草に隠れて狙っているのは――年端もいかない二人の少年兵であった。
(焦るなよ、ロッコ。いくら戦死した親父さんの仇だからって……)
(わかってるよ、ルドル。――生きて戦い続けなきゃ、父さんの仇を討つこともできないんだ。無駄死にするつもりはないよ)
先程の狙撃は、確実に命中させるためとはいえ、かなり敵に接近した状態から放っていた。万一、狙えるタイミングを確保する前に気づかれていたら、命はなかっただろう。
――事実、王国軍の敗残兵達の多くは血の気の多い若者であり、彼らの死因のほとんどが、経験の浅さからくる「深追い」であった。この辺りにいる敗残兵も、もはやこの少年達しかいないのである。
(さぁ、残りは二人。じっくりと追い詰めて……みんなの苦しみを少しでも……!)
そして、ロッコと呼ばれた少年もまた――その死因に近付こうとしていた。
一気に残る帝国兵達を仕留めようと、身を乗り出した彼の目の前に――新手が現れたのである。
(あいつは……?)
さらに、ロッコはその新手の姿に違和感を覚えていた。
帝国兵達と同じ格好をしていることから、帝国兵の一員であることは想像できるが――背が凄まじく低い。自分達と、変わらない年頃ではないのか。
(帝国軍は少年兵の募集はしてない……って、父さんは言ってたけど……)
(じゃあ、あいつは一体……?)
この世界では希少な黒髪を持っている彼は、二人の帝国兵達と合流しようとしていた。――彼も帝国軍の一員だというなら、今が絶好のチャンス。
(……やるしか、ないな。ごめんよ、僕達と同い年くらいなのに……。でも、僕達だってこんなところで死ぬわけには行かないんだ)
僅かな逡巡を経て、ロッコは小さな帝国兵を狙撃することを決意する。まだ向こうは自分達に気づいていない。今なら、確実に仕留めることができる。
ロッコは、自分を見守る親友ルドルの視線を背中で受けながら、ゆっくりと茂みから矢の先を覗かせる。
その狙いは、黒髪の少年の眉間を確実に捉えていた。
(ごめん!)
そして――弓を引き絞る手に纏わり付く、迷いを振り払うように。
ロッコは一気に矢を放つ。
――が。
(え……)
その矢は、眉間の前に引き上げられた鞘に激突して弾かれ、宙を舞っていた。
射られる瞬間、腰の鞘を顔の正面まで持ち上げ、矢から自分を防御する。そんな芸当、「射られると知っていなければ」到底できるものではない。
「あっ――あ!」
その事実にロッコがたどり着く頃には――すでに彼の眉間に、勇者の剣が突き刺さっていた。十数年の人生を終え
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