第二章 追憶のアイアンソード
第27話 母との別れ
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、とある張り紙が飛び込んできたのだ。
それには、行方不明になったある少年の顔写真が大きく写されている。しかも辺りを見渡してみると……それと全く同じ張り紙が、幾つも張られていることに気づいた。
「……俺……?」
行方不明者の名は、伊達竜正。数ヶ月前に消息を絶ち、依然行方がわからないままであると、その張り紙には記されている。
さらに、張り紙の端には連絡先も書かれていた。竜正は、その電話番号をよく知っている。
――母の、連絡先だからだ。
「……母、さん……!」
竜正はこの張り紙一枚で、自分がいない間のことを把握してしまう。
異世界に召喚されている間、行方不明となっていた自分を探すために、母はこんな張り紙をあちこちに張りながら、懸命に情報を集めようとしたのだろう。
息子が異世界に勇者として召喚されていた、ということなど、知る由もないのだから。
(母さんは……大丈夫、なんだろうか)
張り紙の数は尋常ではない。しかも、自分がいなくなってからかなりの日数が経過している。
もしかしたら憔悴のあまり、気を病んでいるかも知れない。
しかも今日は平日なのか、住宅街の中なのに人気がまるで感じられない。そのことが、竜正の不安をさらに煽る。
言いようのない孤独感。母の安否。それら全てが、竜正の心を押し潰そうとしていた。
すると――その時。
「息子さんは帰ってくるのでしょうか!?」
「警察の捜索も手詰まりになっている、という情報もあります。それについて何かコメントは!?」
「伊達さん、答えてくださいよ! 伊達さん!」
曲がり角の向こうから、数人の声が響いてくる。何を喋っているかはわからなかったが、竜正は無意識のうちに塀をよじ登って内側に飛び込み、身を隠した。
声の主達は竜正には気づくことなく、塀のそばを通過していく。その間も、彼らの声はひっきりなしに住宅街に響き続けていた。
「……!?」
そして、彼らが竜正が隠れていた塀を完全に通り過ぎた時。声の主達の話し声をはっきりと聞き取った竜正は、血相を変えて塀から身を乗り出した。
視界に映るのは、マイクやカメラを構えた報道陣らしき人々の後ろ姿。そして、彼らの追及を受けているのは――
(母さん!?)
――間違いなく、会いたいと願い続けていた母の背中だったのだ。
「伊達さん。先程も申し上げた通り、息子さんの捜索は警察でも難航しているらしいんですよ。そろそろ、亡くなってる可能性も考えないと、余計に辛いのでは……?」
「そもそも彼が行方不明になった原因がわからない、というのは本当なのでしょうか? 家庭環境に耐えかねて――という理由でいなくなる、ってのもよくある話ですよ。あぁ、別に息子さんのことを言っている
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