第二章 追憶のアイアンソード
第24話 王国将軍アイラックス
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ずとも命はなかっただろう。
そう判断してからのアイラックスの行動の速さに、仕掛けたアンジャルノンも目を見張る。背中に傷を負ったアイラックスは、片手で大剣を構えたまま痛みを表情に出さず、あくまで冷静に相手の出方を見ていた。
「愚かな……そんな荷物を抱えているばかりに、余計な痛手を負うとはな」
「貴様にとっては荷物でも、一人でも戦える人間が必要な我々にとっては、かけがえのない仲間。――決して、こんなところで死なせはしない」
「それが愚かだと言っておるのだッ!」
そんな彼の姿勢を鼻で笑い、アンジャルノンは横薙ぎに鉄球を振るう。空を裂く鉄塊が弧を描き、アイラックスに迫った。
だが、彼はそこから動くことなく――少年兵の小さな身体を空中に振り上げ、即座に大剣を両手で構える。
そして、宙へ舞い上げられた少年兵の身体が、重力に引かれ落下を始める瞬間。
息を吸い込み気勢を充実させ、アイラックスは迎え撃つかのように大剣を水平に振るう。
刹那、その巨大な刀身は横一文字の閃光を描き――悪しき存在に裁きを下すかのように。
「王国式闘剣術――弐之断不要ッ!」
振り抜かれた一閃で、圧倒的質量と速度を持っているはずの鉄球を……打ち返してしまうのだった。
そう。二度目の斬撃は要らない。この一閃だけで、全てを終わらせる。そう、宣言するかのような一撃を以て。
「ぐっ……あああァッ!?」
そして、その宣言通りに。
打ち返された鉄球が、馬上に座したアンジャルノンの顔面を直撃する。まさか自分の鉄球がそっくりそのまま打ち返されるなどとは微塵も考えていなかった彼は、全くその反撃に対応できなかったのだ。
為す術もなく落馬し、赤い巨漢は地響きを立てて墜落する。
一方、その瞬間を見届けることもなく、アイラックスは踵を返して大剣を大地に突き立てた。彼にとっては、もはや敵の意識など確かめるまでもないのである。
そして、彼は空いた両手を広げて――空から落ち行く少年兵を穏やかに受け止めた。気絶しているものの、命には別状がないことを確認する彼は、僅かに頬を緩ませる。
一騎打ちは、アイラックスの完勝。
その光景は、弱りつつあった帝国軍の戦意に、とどめを刺すこととなった。
「アンジャルノン将軍が……負けた……!」
「終わりだ……もう、終わりだァァァ!」
指揮官を失い、統制が取れなくなった帝国兵達は我先にと逃げ出していく。意識のないアンジャルノンを引き摺り、退散していく彼らを追うことなく、アイラックスは部下達に目を向けた。
「……皆。よくやってくれた。この戦いは我々の勝利だ」
「将軍! なぜあのままとどめを刺さなかったのです! それ
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