第二章 追憶のアイアンソード
第24話 王国将軍アイラックス
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ていた、一人の少年兵が――戦いの激しさを掻い潜り、アンジャルノンに飛びかかった。その手には、少年兵用の粗悪な銅の剣が握られている。
「……」
「あうっ!」
少年兵の銅の剣は馬上のアンジャルノンに命中した――が、その威力はアンジャルノンの鎧を貫くにはあまりにも非力であった。
蚊が刺した程度のダメージすら与えられないまま、銅の剣は弾き飛ばされてしまい――少年兵は、アンジャルノンに首根っこを掴み上げられてしまった。
自分に挑みかかってきた少年兵を見つめるアンジャルノンは、無言のまま少年兵の首を締め上げ――こめかみに血筋を浮き上がらせた。
こんな小さな少年兵までもが自分の邪魔をしてきた。その出来事が、アンジャルノンのプライドにより深い傷を与え……彼の怒りを掻き立てたのだ。
「クソガキがぁあぁあッ!」
「あが……ぁっ……!」
アンジャルノンは怒りのままに少年兵を吊り上げ、首を絞めて行く。少年兵は抵抗することもままならず、舌を出して目を剥いた。
「……ハ……ンナ……」
そして、少年兵の首が完全にへし折れる寸前。彼は、従軍する直前まで兄妹のように育ってきた少女に、想いを馳せる。
それを最期に、幼い命が戦場に散って行く――
「トゥアッ!」
「ぬっ!」
――刹那。
ついにアンジャルノンの元へ辿り着いたアイラックスの大剣が、少年兵を掴む腕に向かって振り下ろされた。
その瞬間に殺気を感じたアンジャルノンは、咄嗟に少年兵を投げ捨て、その一閃を回避する。アイラックスはその直後、転げ落ちるように馬上から飛び降り――地面に激突しようとしていた少年兵をキャッチした。
そして――双方の視線が交錯する。
「おのれ……小国の将軍風情が、この俺に楯突くとは!」
「――その小国の将軍風情に、冷や汗をかかされる気分はどうだ。帝国軍」
馬上のアンジャルノンを睨み上げるアイラックスの瞳は、眼前の巨漢が背負う鉄球に怯むことなく、手にした大剣を静かに構える。気を失った少年兵を、その片腕に抱きながら。
「そんな格好で戦うつもりか。――俺もなめられたものだ」
「ならばその得物で、私の侮りを払拭してみせろ」
「……言われるまでもないわッ!」
言うが早いか、アンジャルノンは炎を吐くかのようにけたたましい雄叫びを上げ、手にした鉄球を振るう。風を切る鋼鉄の塊が、轟音を上げてアイラックスの頭上へ肉薄した。
しかし、黒髪の将軍は紙一重でそれをかわすと――少年兵を庇うように身を翻し、鉄球の衝撃により飛び散る砂利を背中で受け止めた。
超重力の鉄球が落下することによる余波の威力は、計り知れない。ただの砂利でも速度が付けば、鋭利な刃物になる。
弱っている少年兵がそれを浴びれば、直撃せ
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