暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第二章 追憶のアイアンソード
第24話 王国将軍アイラックス
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駆け巡る。一瞬の中で多くの命が失われて行く中、アイラックスはかけがえのない部下を一人でも多く救うべく、先陣を切って大剣を振るい続けていた。

 一方、アンジャルノンは後方に座して飢えた兵達をけしかけるばかりであり、自らの得物である鉄球を使う気配を全く見せない。すでに数多くの兵がアイラックスに討たれているにも拘らず、その重い腰は未だに馬上から動かずに居た。

(ちっ……思っていたよりは精強だな。あれほどまでに追い込んだ兵達を相手に、精神面
で屈さぬとは。アイラックスの噂も、まんざらデタラメばかりではなかった、ということか……)

 犠牲となっていく兵の命など気にも留めない――という様子で、アンジャルノンは膠着している戦況を見つめていた。
 今迄アイラックスに挑んだ武将達が不甲斐なかっただけ。王国軍など恐るるに足らず。そう思い込んでいたアンジャルノンは、眼前の現実を前にして、ようやくそれが誤りであることに気付いたのだ。

(しかし、奴がここに辿り着く頃には向こうも憔悴し切っていることだろう。それから俺の鉄球で料理してやればいいだけのことよ。――愚かな王国騎士共への見せしめとして、な)

 士気の要であるアイラックス将軍さえ討てば、残った王国軍は烏合の衆に過ぎない。だから、先頭で戦うアイラックスに兵達をぶつけ、疲弊したところを討てばいい。
 その作戦自体は、悪手ではない。

 しかし彼は、一つ誤算していた。
 飢えた帝国兵を蹴散らし、王国軍の道を切り開いて行くアイラックスは――全く息を切らしていなかったのだ。
 馬上から身の丈を越える大剣を振るい、兵を率いて進撃する。それだけの激しい戦いを絶え間無く続けていながら、アイラックスは疲れた気配もなく、前進しているのである。

(バ、バカな……ええい、化け物がッ!)

 彼が自分の陣地に近づいて来るに連れ、そのことに感づくようになったアンジャルノンは、アイラックスの底無しの体力を前に驚愕し――額に脂汗を滲ませた。
 だが、既に時遅し。アイラックスの圧倒的な戦闘力により勢いを殺された帝国兵達は、飢えさえも忘れるほどの恐怖に駆られ、徐々に後退するようになっていた。

(バカな、バカなバカな! 負けるだと!? 偉大なる帝国軍の武将たるこの俺が、名門出のこの俺が! こんなちっぽけな国の将軍一人に、負けるだと!?)

 もはや、アイラックスのスタミナを奪う術もない。アンジャルノンはこれほどの相手と真っ向から戦わねばならない事態に直面し、焦りを募らせる。
 己のプライドを激しく傷付ける現状を前にして、彼の思考は冷静さを失って行くのだった。

 そして――アイラックスだけでなく、王国軍の騎士達までもがアンジャルノンの近くに迫る頃。

「やぁあぁああっ!」

 戦禍に紛れ
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