暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第二章 追憶のアイアンソード
第22話 帝国勇者の初陣
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「今だッ! 勇者の導きに従い、この戦場の血路を開けぇッ!」

 ――バルスレイの怒号に突き動かされた兵達が、雪崩の如き勢いで王国軍へ接敵して行くのだった。
 予想だにしなかった敵軍の「新兵器」を前に、王国軍は為す術もなく数で勝る帝国軍に押し潰され――敗走していく。
 それは、アイラックスという男によって一度は覆された戦況が、本来の形へと揺り戻される瞬間であった。

(俺は……俺は必ず、母さんのところへ帰るんだ。そのためなら――)

 ――そう。
 この戦いで初陣を飾った若き勇者は。

(――なんだって、やってやる。誰だって、殺してやる!)

 命を奪うことを恐れることもなく、数多の兵士をその手にかけたのだ。
 人の胸中に微かに潜む「殺意」を膨らませ、理性を押し潰す「勇者の剣」の力によって。

 ――意識を乗っ取るわけではない。あくまで、己自身の胸に在る悪意。剣はそれを、強く引き出しているに過ぎないのだ。
 だからこそ、後に少年は――ありのままの自分が犯した罪を、知ることになる。

『タリナイ……チ、チガ……タリナイ』

 手にした剣の囁きに従い、戦い抜いた先の――絶望を。

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