第二章 追憶のアイアンソード
第19話 勇者の資格
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の?」
「……はい」
だが、母に会いたいという彼の願いを無下にはできない。その葛藤に苛まれている彼女は、傷と剣だこだらけになった竜正の手に、白く瑞々しい自分の掌を重ねる。
「私、勇者を召喚すると決まった時……本当は、怖くて仕方がなかった。逃げ出したくて、たまらなかったのです」
「怖い……? 勇者が?」
「……はい。古に伝わる魔王すら屠る存在であるということは、それ以上の力の持ち主であるということ。もし、何かの拍子に勇者様のお怒りに触れるようなことがあれば、この帝国は……民はどうなってしまうのかと……私はずっと、不安だったのです。先代勇者のような、正義と愛に溢れた傑物が来るという確証など、ありませんから」
「そっか……ただただ強い上におっかない奴だったら――って考えたら、そりゃあ怖いよな」
左右に首を振り、肩を震わせて語るフィオナ。そんな彼女の様子を見遣り、竜正は召喚術者として彼女が背負っていたプレッシャーの重さを垣間見るのだった。
(でも、それって俺が本当の勇者だって話と、どう関係あるんだろう?)
――フィオナの考えに、少しばかり首を傾げながら。
「だから、初めて勇者様にお会いした時は……驚きましたわ。私と数歳程度しか離れていないような人が、本当にあの、伝説に伝わる勇者様なのか――と」
「あはは……確かに、そりゃあ拍子抜けだな。厳ついおっさんが出てくるかと思ったら、俺みたいなガキだもんな」
「……けれど。今ならわかります。そんなあなただからこそ、真の勇者なのだと」
「俺、だからこそ?」
フィオナの言葉に、竜正はさらに混乱する。自分に、勇者としてどんな適性があるというのか――と。
「バルスレイ将軍は……比類なき強さを誇る帝国最強の武人。戦った相手は、訓練であっても瞬く間に戦意を失ってしまう――と言われています。私も、彼に挑んだせいで剣を握れなくなった騎士を何人も見てきました」
「そっ……か。そうだよな。確かにあの人、恐ろしく強いもんな」
「――けれど。あなたは何度彼に打ち倒されても、怯むどころか益々戦意を燃やして、立ち向かって……。あんな風に戦える騎士を、私は今まで見たことがありません」
「あ、あれは単に往生際が悪いだけだよ」
自分をしきりに褒め称えるフィオナの言葉に、照れ臭さを覚えたのか――竜正は頬を染めて自虐する。だが、そんな彼の言葉に、銀の姫君は小さく首を振って否定するのだった。
「いいえ。私は――あなたの戦いを見て、ようやく理解しました。勇者……すなわち勇気を持つ者とは。魔王さえ凌ぐ絶対的な強者などではなく――如何なる相手にも立ち向かえる心の持ち主を指すのだと」
「立ち向かえる、心……?」
「……私は今まで、自分の身体の弱さに甘えて……昼間でも室内に塞ぎ込んだ
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