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ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第二章 追憶のアイアンソード
第17話 明かされる物語
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いたのか。それを知ることができる、絶好の機会だったからだ。
 しかし。それ以上に彼女は――城下町の火災を食い止めるため、片腕を痛めていたダタッツの体調が気掛かりだったのだ。

 規律を乱したことにより、反省させられていることへの気まずさ。目の前の男への想いを知られたくない、という恥ずかしさ。
 それらの気持ちが絡み合い、ロークは腕への気遣いを言葉に出せず、俯いてしまう。

 そんな彼女の胸中を察してか――ダタッツはフッと微笑むと、彼女の両手に提げられた桶を優しく取り上げた。

「あっ……!」
「ダイアン姫から許可は降りてる。謝らなきゃいけないって思うなら、ジブンも一緒に謝るよ」
「で、でも!」
「腕なら平気。ありがとう、気遣ってくれて」
「……!」
「さ、行こう? ダイアン姫も待ってる」

 その笑みに、ロークは翻弄されるように頬を染め――意地を張る余裕もないまま、彼に手を引かれ、寝室へと向かっていく。
 まるで、エスコートされる淑女のように……。

 ――そして。

 王族の寝室に集まった五人の男女。
 ダタッツ。ダイアン姫。ローク。バルスレイ。国王。
 一堂に会する彼らの中で、初めに口を開いたのは――

「さて……ダタッツよ。そろそろ、思い当たることを話して貰いたい」

 ――真紅の鎧に己を固める、老練の武人。バルスレイだった。
 長きに渡る戦いの人生により培われた眼光が、国王の前に跪くダタッツへと向けられる。

 その眼差しを浴びるダタッツは、自分の隣で案じるようにこちらを見つめるロークの視線を他所に、真摯な表情で顔を上げる。
 話すべきことを纏めた人間が、見せる貌だった。

「ヴィクトリア様が、『勇者の剣』を使える理由……。それは恐らく――」

 そして、彼は静かに。

「――彼女が先代勇者の血を引いているから、であるかと」

 この場に居る人間全員に、衝撃を叩き込むのだった。

「先代勇者!? それは誠なのか、ダタッツ殿!」
「つまり、ヴィクトリアは――アイラックスは、勇者の末裔だったと!?」
「本当なのですか、ダタッツ様!」
「ヴィクトリア、様が……!?」

 どよめく四人に対し、ダタッツはあくまで冷静な面持ちで話を続ける。彼らが驚く様子も、全て予測していたかのように。

「『勇者の剣』は勇者にしか扱えない。その力が遺伝するものであったとしたら……ヴィクトリア様が使えることにも、説明が付きましょう」
「……確かに、アイラックスもヴィクトリアも、滅多にいない黒曜石のような黒髪の持ち主。お前と同じ、異世界から来た勇者を先祖に持っている、という説は確かにあり得るかも知れん……」

 この世界に伝わる伝承では、勇者は魔王を倒した後、旅に出て行方を眩ましたと
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