第二章 追憶のアイアンソード
第17話 明かされる物語
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かし。そんな彼と視線を交わす、ダイアン姫の眼差しは――
「――あなたでも解決出来ない程の事件であったならば……安全な場所など、どこにもないでしょう? 王宮から頑なに出てこなかったあなたが、ハンナさんの無事を確かめるためだけに、わざわざパトロールと言い張って外に出る程の事件……となれば」
「……!」
「わからないとでも? ……わたくしは、何から何までまであなたに縋るほど、弱い姫騎士でいるつもりはありませんわ」
――アンジャルノンと戦っていた時とは、比にならない鋭さを湛えていた。
「お遊び」としてババルオに用意された相手とは違う、死と隣り合わせの戦いを経験したことが、いつしか彼女に剣士としての変化を齎していたのだ。
そんな彼女の面持ちを前に、ダタッツは悟る。彼女はもはや、守られるだけの姫君には戻れないのだと。
「……さぁ、用が済んだのなら城に戻りましょう。あなたには、聞かなくてはならないことがあります」
「――わかりました。ただ……」
「ただ?」
「……もう一人。それを聞かせなくてはならない人がいるのです。もはや、隠し通せないところにまで来てしまいましたから」
訝しむ彼女に対し、ダタッツはそう答えると、視線を王宮の方角へと向ける。
――正しくは、その中にある練兵場へと。
「……」
そんな彼の背を――その右腕を、ダイアン姫は静かに見つめている。
あの時も、アンジャルノンとの戦いの時も。彼女はダタッツに回復魔法を施そうとはしなかった。
恐れているからだ。一度でも彼を癒してしまえば、一度でも彼に心を開いてしまえば……自分はすぐに、骨抜きにされてしまうと。それほどまでに、彼に惹かれてしまっている事実を、認めてしまうのだと。
(認めない……認める、ものですか……)
桜色の唇を噛み締め、拳を握り――姫騎士は、彼の背を睨み続けていた。
――その後。
「……なんだよ、オレを笑いに来たのかよ」
騎士団が訓練に励む中。練兵場の片隅て、両手に水浴び用の桶を抱え、反省の意として立たされている少女騎士が一人。
拗ねたような表情で、パトロールから帰って来たダタッツを見上げていた。
「違う。……君も聞いていただろう? 昨日、国王陛下の寝室でジブンが話そうとしていたこと」
「……!」
「あれを、寝室で改めて話そうと思う。君にも、一緒に来て欲しいんだ。今度はちゃんと正門から入って、ね」
「……別にいらねぇよ、そんな気遣い。そんなことより……!」
「ん?」
「あ、い、いや、なんでもねぇ」
少女騎士――ロークの本音としては、その誘いには飛びつきたくてたまらなかった。
傷付いても味方がいなくても、この国の人々のために奮闘できる彼が、なぜ帝国勇者として自分達に牙を剥
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