第二章 追憶のアイアンソード
第17話 明かされる物語
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それを振り下ろす先を失った今、「勇者の剣」はもはや……暴発を待つ災厄の存在でしかない。その兆候が、この光景なんだ……)
――無言を貫き通し、破壊された町の姿を、ひたすらその眼に刻み続けている。
「そういや、帝国勇者も戦ったのかな……。噂じゃ、姫様達と一緒に野党達をとっちめたらしいけど」
「まさか! どうせ騎士団みたいに途中で逃げたか、参加すらしなかったに決まってらァ。王国人を大勢殺したあいつが王国を守るために戦ってたなんて、俺ァ信じらんないね」
「よせよ、ルーケンの店の前でそんなこと……」
帝国勇者を噂する人々の言葉は、ある人物の名前が出たところで打ち切られた。その名の持ち主――廃墟の前で黙々と復興作業を続ける男性は、無言のまま眉を顰めている。
その隣で彼を手伝う、そばかすの少女も、町民達の言葉を受け、表情を曇らせていた。彼女の両手に在る、焼け焦げた料亭の看板が、戦いの痛ましさを物語っている。
帝国勇者が旅人を装い、ルーケン達を騙して料亭で働いていた、という話は有名だ。
かつて彼の味方をしていた常連客達は、口々に彼を罵り続けていたが、それが少女にそのことを思い出させてしまうことに繋がると気づき、口を塞ぐ。
(挫けてなんか、いられないよね。天国のお兄ちゃんにも……みんなを守ってくれたダタッツさんにも、笑われちゃう)
しかし。
その少女――ハンナは、それでも逆境に負けまいと、気丈な面持ちで空を見上げ……白装束の騎士に微笑みかけるのだった。
私達は大丈夫だから、心配しないでください――と、勇気付けるかのように。
それを見た人々は、これ以上の陰口を続けることの無意味さを悟らされたのか。気まずい表情を浮かべ、蜘蛛の子を散らすようにこの場から離れていく。
やがて騎士の方もハンナの想いを汲んでか、何も語らぬまま踵を返して立ち去るのだった。
(ハンナさん……やっぱり、強いんだな。君は)
そして――路地裏でフードを脱ぎ去った、黒髪の騎士は。
彼女の強さに惹かれるように、一度だけ振り返ると……そのまま王宮へと歩みを進めていこうとする。
「こんなところにいらっしゃいましたか。――探しましたよ」
すると。路地裏の入口に差し込む光を背に浴び、一人の姫騎士が姿を現す。その登場に、黒髪の騎士――ダタッツは一瞬だけ驚くように目を見開き、ため息をついた。
「その様子だと、腕はもう大丈夫のようですね」
「ダイアン姫。今はいつまた戦いが始まるかわからない状況なのです、迂闊に出歩いてはいけません。ババルオの雑兵とはわけが違うのですよ」
「『勇者の剣』の力……ですか。確かにその通りでしょうね。けれど――」
そうして、彼女がここに居ることを無謀と見なそうとするダタッツ。
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