第二章 追憶のアイアンソード
第16話 勇者の剣
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いでくれたおかげで、万全の準備で事に臨むことが出来たのだからな。さぁ、この街に手を出す愚者共に、然るべき鉄槌を下す時が来たぞ!」
「ハッ!」
彼の背後に控える、深紅の甲冑に身を包む帝国騎士達。彼らは主の命に応じると――怒号を上げて野党達に襲い掛かって行った。
僅かな時間を代償に、完全な武装で戦闘に臨んで行く彼らの気勢は、突発的な襲撃に乱された王国騎士団とは比べ物にならない気迫を放っている。
さらに脚を斬れば無力化できるという情報を得ているためか、彼らの戦いには一切の迷いも試行錯誤もない。
ただ為すべき任務を、全速力で遂行していくのみ。そう言わんばかりの素早さで、帝国騎士達は次々と野党達の脚を斬り裂いていった。
「つ、強い……」
「これが帝国の、騎士なんだ……!」
ダイアン姫とロークは、その流れるような戦いぶりに目を奪われ、一歩も動けずにいた。ババルオの私兵達とは天と地ほどの差がある、バルスレイの部下達の剣技は、彼女達に「帝国騎士」の真の力を悟らせたのだ。
「……」
一方。ダタッツは、彼らの剣技ではなく――圧倒され、鎮圧されていく野党達を注視していた。
帝国勇者だった自分を凌ぐ恐怖。その実態を解明しようと、己の眼を光らせて。
(あの恐れ方……節々に見える切り傷……。まさか……いや、もはやそれ以外には……)
そして――帝国騎士達により野党達が全員無力化され、地に倒れ伏した時。
戦いの終わりを空気で感じ取ったダタッツは、剣を鞘に収めると……静かな足取りで倒れた野党達の内の一人に近づいていく。
「ダタッツ殿。まだ奴らは死んだわけではありませぬ、お下がりください」
「……心配ない。ジブンに任せてくれ」
引き留めようとする騎士を片手で制し、ダタッツは倒れた野党の側で片膝をつく。
足を失った痛みで、少しは正気に近づいたのか……野党は怯えるように身を震わせ、抵抗する気配を失っていた。
(……やはり、間違いない)
野党達に起きた、精神異常。それは、ダタッツがよく知る現象だったのだ。
怯えた野党を見つめる彼の眼に、もう戸惑いはない。彼にとっては、あり得るかも知れなかった可能性が、現実のものとなっただけなのだから。
「ダタッツ様、もしや何かわかったのですか?」
「……えぇ、わかりました。ジブンには、よくわかります」
その言葉に、ダイアン姫とロークは目を見開き――帝国騎士達は互いに顔を見合わせる。バルスレイの表情も、より険しいものになっていた。
「ダタッツ。まさかとは思うが……」
「そのまさか、です。バルスレイさん」
神妙な面持ちで、ダタッツはバルスレイと視線を交わし――その場に立ち上がる。
「この野党達を支配していた狂気。それは
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