第二章 追憶のアイアンソード
第16話 勇者の剣
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でいった。鉄の剣を握っていた右腕を、庇うように左腕で抱えながら。
憎めばいいのか、礼を言えばいいのか――そう思い悩む民間人達に、背を向けたまま。
「ダタッツ、様……」
「帝国勇者……」
料亭を破壊したこと。火災の拡大を阻止したこと。その両方の事実が、彼を見つめる者達の心を惑わせている。
それにダタッツの様子を見れば、今の技を放つために右腕を痛めたことも容易に窺い知れる。そんな彼を責め立てることに、彼女達は葛藤を覚えていた。
「ギアァアァアッ!」
――すると。
その士気の乱れを、崩壊した理性の果てに残された本能で感じ取り――野党達が武器を掲げてなだれ込んで来る。
ダイアン姫とロークは無数に煌めく狂乱の瞳を見据え、ダタッツを守るように各々の剣を握り締めた。
「帝国式投剣術ッ……飛剣風!」
刹那。
ダタッツとは異なる――古強者の声が、夜空に轟き。
野党達の先頭に立つ男の膝が、突如砕け散り――片足を失った男が、うつ伏せに倒れて行く。
さらにその男の足元に広がっていた石畳が弾け飛び、その破片が周囲の野党達を打ち抜いて行った。
そして……その爆心地には。
帝国騎士の剣が、深く突き立てられていた。
大の男の鍛えられた脚を、紙切れのように切断し――それだけに留まらず、石畳まで破壊していく圧倒的な破壊力。
その威力を生み出す、目にも留まらぬ疾さ。
この二つが揃わねば、決して起こり得ない現象が今、この戦場に広がっている。
「これは……!?」
驚嘆する姫騎士達は、声が轟いた方向へ振り返り――現象を起こした者の姿を視界に捉えるのだった。
「……遅くなったな」
民家の屋上に立つ、赤い鎧を纏う銀髪の老騎士。
彼の眼は、戦場に立つ古強者の色を湛え――残る野党達を射抜いていた。その視線はやがて、右腕を抑えたまま戦況を見守っているダタッツへと向かう。
「……螺剣風を使ったのだな。全く、相変わらず無茶をする」
「バルスレイさん……」
「飛剣風の派生技にして、最強の破壊力を誇る帝国式投剣術の奥義。――だが、刀身を回転させて貫通力を高めるために、腕を捻る動作が加わるため、関節に掛かる負担が非常に強く、自らの剣士生命を縮める諸刃の刃でもある。……それゆえに安易に多用してはならぬ、と教えたはずだがな」
「……」
「――それを知った上でも使わねばならぬ。そうお前は決意したのだろう? この街の人々のために」
帝国式投剣術。すでに歴史の中で失われていた、その技を使いこなせる人間など、帝国勇者以外には存在するはずがないのだ。
彼にその剣を伝えた、バルスレイ将軍を除いては。
「――ならば、あとは我々に任せておけ。王国騎士団と姫騎士様が時間を稼
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