第二章 追憶のアイアンソード
第16話 勇者の剣
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いうことなのか」
「ダタッツ様以上、ですって……!?」
「な、なんなんだよそれ……!」
野党達を支配している狂気。その実態を見据えようとするダタッツの言葉に、ダイアン姫とロークは表情を強張らせる。帝国勇者を超える恐怖などあり得るのか、と。
「それよりまず、あの火災を何とかしないと……。放っておいたら、他の民家に燃え移る一方だ」
「そ、そんなこと言ったって、どうすりゃいいんだよ! 他の正規団員は逃げちまったし……!」
野党達の襲撃により、火災に包まれている料亭。その火の手は、周辺の民家にも及ぼうとしていた。
このままでは、被害はさらに拡大してしまう。近くに住む住民の多くはすでに避難しているが、やがてはその避難先に飛び火する可能性もあるだろう。
だが、消火活動を始めるには人手がいる。騎士団が逃げ出した上、野党達との戦闘も続いている現状では、消火に注力できるはずもない。
「どうすれば……くッ……!」
「――やむを得ません。ダイアン姫、バルスレイ将軍が来るまでの間……頼みます。あの火だけでも、消さないと」
「えっ……ダ、ダタッツ様!?」
それでも、なんとかしなくてはならない。
自分達の店が燃えて行くばかりか、周りの町々さえ傷付けていく様を見せつけられ、苦悶の表情を浮かべる二人の民間人。
そんな彼らを見遣るダタッツは、そう判断したのだろう。
ダタッツは鉄の剣を構え、一気に燃え盛る料亭の前に駆けつける。
「帝国式投剣術――」
そして、飛剣風の構えを取り――さらに、柄を握る腕を螺旋状に捻りながら。
「――螺剣風ッ!」
天に向かい、剣を打ち放つのだった。
飛剣風のエネルギーに回転の力を加えられた刀身は、周囲に旋風を巻き起こし――土埃や破壊された家屋の破片を、空高く吹き上げて行く。
「きゃあああっ!」
「うわぁああっ!?」
その風圧は、炎の威力さえ飲み込み――料亭を取り巻いていた火の手を、瞬く間に掻き消してしまうのだった。
……そう。ダイアン姫とロークの悲鳴が終わる頃には。全てが、終わっていたのである。
螺剣風の威力により、火災ごと吹き飛ばされた料亭。それが在った場所だけが、台風の跡のような廃墟と化していた。
その圧倒的な破壊力を前に、ダイアン姫とロークは驚愕するばかりだった。
「……な、なんてヤツだ……!」
「これが……帝国式投剣術の、真の威力……!?」
旋風を巻き起こし、天へ旅立っていた剣が、地上へ墜落してくる頃。ダタッツは踵を返し、鞘を天に掲げていた。
その鞘に、堕ち行く剣が収まり――乾いた金属音が響き渡る時。彼は、静かに歩み始める。
ダタッツは振り返ることなく、ダイアン姫達の方へと進ん
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