第二章 追憶のアイアンソード
第15話 無謀な出動
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ロープの下を、猛烈な勢いで滑り降りて行くのだった。
「どわぁぁああぁぁああ!」
その速度と、王族の寝室から城門近くまで空中を直進して移動するという異常な状況に、ロークは絶叫を上げる。彼女の叫びは非常事態を示す鐘よりも強く、王宮中に轟いていた。
「……」
「……なんという、男なのだ」
あまりに型破りなダタッツの出動に、国王もダイアン姫も言葉を失っている。洗濯用のロープを使って戦いに向かう騎士など、この国においては前代未聞なのだ。
小国の王宮ゆえ、それほど高く造られているわけではないとはいえ、普通に考えれば自殺行為以外の何物でもないのだから。
「……はっ! いけない、わたくしも行かなくては……!」
それでも、いつまでも立ち止まってはいられない。ダイアン姫は自分がやるべきことを思い出し、面持ちを引き締める。
――が、ダタッツが残したロープを使うことには、若干の抵抗があった。彼の力を借りて現場に向かうということは、帝国勇者の助けがなければ何もできない、ということになってしまう。
そんな思いが、彼女の脳裏を過っていたのだ。
(しかし……彼が先に現場に到着して事件を解決してしまったら……わたくしが何もできないまま終わってしまう。そんなことになったら、それこそ王国の非力さが露呈されてしまいますわ)
だが、ダイアン姫はそれでもと、己に言い聞かせる。
あの速さなら、ダタッツはすぐに井戸に降り立ってしまうだろう。自分一人がセオリー通りに階段を下っていたら、到着する頃には何もかも終わっているに違いない。
騎士団も姫騎士もろくに活躍しないまま、帝国勇者の力一つで事件を解決されようものなら、王国の名誉は今度こそ死滅する。
それだけは、なんとしても回避しなくてはならない。憎き仇敵に全てを委ねるなど、あってはならない。
その気高く猛々しい対抗心が、ダイアン姫に火を付ける。
「絶対に、屈しません……! 帝国勇者になど、絶対にっ!」
「ダ、ダイアン!?」
怒りに顔を赤らめ、ダイアン姫はダタッツを追うように窓目掛けて爆走する。軽鎧の背後で揺らめく、己の白マントを破りながら。
「やぁあぁあああっ!」
そして、娘の暴挙に驚愕する父を尻目に――新緑の鎧を纏う姫騎士が、夜空へ向かって舞い飛ぶのだった。
ダタッツに倣うように、白マントをロープに引っ掛けた彼女は、その両端を両手で掴み、勢いよく城門へ滑り降りて行く。
「きゃああああああっ!」
その想像を絶する速度に、悲鳴を上げながら。
「……彼を、信じてよかったのだろうか」
――そして。
やがて静寂を取り戻した寝室に、ただ一人残された国王は。
あまりに破天荒な帝国勇者の実態と、それに対抗
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