第二章 追憶のアイアンソード
第15話 無謀な出動
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――言葉として、ダタッツに届けられるのだった。
ダタッツが、ただの悪党ではないのなら。止むを得ず、戦っていたというのなら。
その理由を知らねば、やりきれない。
ダイアン姫やロークが抱える、そのもどかしさを代弁する彼を前に……ダタッツは逡巡するように目を伏せる。
(ただ俺を憎む方が、ずっと楽だったはずだ。それでも、この人は……)
憎み合いを続ければ、争いが繰り返され――人々はいたずらに血を流す。
統治者として、それだけは避けねばならない。これ以上、民を苦しめてはならない。
その想いを乗せた眼差しを、ダタッツは直視できずにいたのだ。
(話すべきだろうか。俺の、浅はかな理由を)
彼が背負うものの重さと、自分が帝国勇者として戦った理由。それは決して、釣り合いが取れるようなものではなかった。
話せば、彼らを失望させてしまうだろう。そんな理由で、自分達は大切な人々を奪われたのかと、落胆してしまうだろう。
だが。
そうとわかっていても、語らないままではいられない。国王の想いに、触れてしまった以上は。
「……国王陛下。ジブンは――」
決意にも、諦めにも似た心境で、ダタッツは重い口を開く。どのような反応をされようと、あるがままに語る他ない。
そう、己に言い聞かせて。
――しかし。
「盗賊だーッ! 野盗共が城下町に侵入してきたぞーッ!」
「野盗だと!? なぜ今になって!?」
突如、宮内に響いた騎士達の喧騒が、その続きを断ち切ってしまう。非常事態を報せる鐘が鳴り、王宮内は一瞬にして臨戦態勢に突入するのだった。
さらに王室まで轟いて来た声の一部を聞き取り、この場に居る人間達は、即座に状況を把握する。
「ババルオが去り、バルスレイ将軍が監視についたこの状況で盗みを働く賊だと……? 正気の沙汰ではないな」
「――お父様、わたくしが出向きますわ。帝国兵達がほとんどいなくなっているとはいえ、騎士団の士気はまだ回復しきっておりません。野盗共に呑まれる前に、わたくしが現場で指揮を取りますわ」
「ダイアン、しかし……」
「心配ならいりません。お父様が信じた、新戦力も居るのですから」
たじろぐことなく、素早く行動に移ろうとするダイアン姫は、国王の心配を他所に戦闘準備を始める。鞘から抜き放たれた剣が、窓から差し込む月光を浴びて鮮やかに煌めいた。
その柄を握る姫騎士の瞳は、半信半疑の色を滲ませて、予備団員の眼を射抜く。
「……協力して頂けますね? ダタッツ様」
「もちろんです、姫様。しかし、ここを出て階段を下り、正門から出動したのでは時間が掛かり過ぎる。敵方の規模次第では、対処が遅れてしまう可能性もあります」
「遅れてしまう――って、なら一体どうすれば……
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