第二章 追憶のアイアンソード
第13話 王国騎士ヴィクトリア
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たい話が……!」
今は到底それどころではない――のだが、報告に来た騎士の表情を見るに、そちらに切迫した事情があることも想像には難くなかった。
やがて、数秒にも満たない間を置いて、皇帝はひとまず報告を聞くことを優先する。
「――手短かに申せ!」
「ハッ! 王国に、我が帝国の勇者様と思しき人物が現れましたッ!」
そして、その報告はさらにこの場を驚愕の渦に叩き込むのだった。
人々は大きくどよめき、フィオナは両手で口を覆い、目を見開く。皇帝はあまりにも突飛な報告内容に、開いた口が塞がらずにいた。
そしてヴィクトリアは瞳を鋭く研ぎ澄まし――報告に来た騎士を見据えている。
「なんだとッ!? それは誠かッ!」
「ババルオの制裁に向かわれたバルスレイ将軍の部隊が到着する直前、アンジャルノンを含むババルオの私兵団全員が、たった一人の剣士に打ち倒されたという情報がありました! その剣士は、首に赤いマフラーを巻いていた、とも……!」
「赤い、マフラー!?」
騎士が齎す情報の一つに、沈黙を貫いていたフィオナが初めて声を上げる。ババルオの処遇に鎮痛な表情を浮かべていた皇帝も、その情報に思わず耳を奪われていた。
帝国勇者をよく知る人物にとって、彼がいつも首に巻いている赤マフラーは、彼を指し示す大きな特徴の一つであった。
(帝国勇者を指導していたバルスレイ殿が、ババルオを……。そうか、だから帝国勇者が……!)
次々と舞い込む帝国勇者の情報に、ヴィクトリアの眼差しは益々鋭さを増して行く。
「勇者様が、生きている……! 勇者、様がっ……!」
一方、フィオナにとっては、その情報は一条の光明だったのだろう。彼女は控え目な胸の前で指を絡ませると、安堵するように膝から崩れ落ちて行った。
「……そうか。生きているのだな。帝国勇者……!」
そして、勇者の剣を鞘に収めたヴィクトリアは――妖しい笑みを浮かべて、王国の方角を睨み付けるのだった。
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