第二章 追憶のアイアンソード
第13話 王国騎士ヴィクトリア
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その現実が、「偉大だった父は、こんな連中に屈するしかなかったのか」と、ヴィクトリアの憤りに拍車を掛けていた。
(なのに、あなたは……死んで逃げようというのか、帝国勇者!)
そして、その怒りの矛先は今――父を殺めた張本人である帝国勇者へと向かっている。六年前に死んだと言われている、帝国勇者へと。
「余も、そう願っている。――さて。此の度の活躍に敬意を表し、貴女には授けたいものがある。……持って参れ」
「……?」
すると。皇帝は片手を上げ、誰かを呼び寄せるように声を上げる。
次いで、飾られた言葉で口々にヴィクトリアを褒め称えていた貴族達が、一瞬にして静かになってしまった。
(なんだというんだ……こうしている間にも、ババルオが王国を――姫様を脅かしているというのに!)
それは用事が済んだ以上、早くダイアン姫の元に帰還したいと考えていたヴィクトリアにとっては苛立ちを募らせる展開だった。元々、王国の立場を悪化させないために出稽古に赴いたに過ぎないのだから。
帝国の金品や勲章に興味を持たない彼女には、褒賞など枷にしかならない。兜の奥で歯を食いしばり、彼女は皇帝が見つめる方向に視線を移す。
――そこには。
ウェディングドレスのような白装束に身を包む――可憐な少女が立っていた。
鮮やかな蝶の髪飾りで纏められた、艶やかな銀髪。水晶の如く透き通る、きめ細やかな柔肌。芸術にも優る絶対的な美貌。蒼空のように澄んだ瞳。
見る者全て――そう、先程まで激しく苛立っていたヴィクトリアでさえ、我を忘れて見惚れる程の麗しい美少女が、この場に現れたのだった。
(……そうか……この方が……!)
ヴィクトリアに、この少女との面識はない。しかし、会ったことがなくとも誰であるかは明らかであった。
皇女フィオナ。この帝国を統べる血統を持つ、皇帝の一人娘。
――そう、ダイアン姫と同じ、この世界における数少ない「魔法使い」なのだ。
(勇者召喚の力を持つ、皇族の正当後継者……! しかし、病弱でほとんど公の場に出ることはないと聞いていたが……?)
まるで妖精のような風貌を持つ皇女は、父に招かれると、静かにヴィクトリアの方へと近づいて行く。その両手には、一振りの剣が握られていた。
(なん……だ? あの剣は……)
黒い鞘に納められた、異色の剣。直剣とは異なる線を描くその刀身は、ヴィクトリアの関心を掴んで離さなかった。
帝国製とも王国製とも違う形状の柄。そこから発せられる「何か」が、彼女の心を引き寄せていたのだ。
「六年前。帝国勇者は貴女の父君、アイラックス将軍を打ち破った。――しかし帝国勇者が亡き今、この地上に貴女を凌ぐ剣士はいまい」
「――ッ!」
「よって、貴
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