第一章 邂逅のブロンズソード
第12話 王国騎士団・予備団員ダタッツ
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その小さな身体に詰め込まれているようだった。
「ば、バカ! 逃げろローク!」
「お前まで殺されちまうぞ!」
そんな正規団員達の叫びにも耳を貸さず、その瞳は強くダタッツを貫いていた。
「いいか、帝国勇者。父上の仇は、オレが必ず取ってやる。だからそれまで、ここから逃げるんじゃねぇぞ!」
「……ああ、わかった。いつでも、受けて立つよ。ところで、どこまで付いてくるつもりなんだい?」
「一日中さ。オレは姫様から、お前の監視役を任されてるんだ。それに、こうしてお前に引っ付いて研究していれば、お前を倒す作戦も立てられる!」
――だが、駆け引きにおいては年相応のようだ。当の「仇」本人の前で、鼻高々に手の内を語るほどの愚策はないというのに。
隣を歩きながら胸を張り、どうだと言わんばかりに胸を張るロークの姿を、ダタッツは微笑ましく見守っている。だが、彼はある場所に辿り着いたところで、困ったように眉を顰めてしまった。
「……なるほどな。だけど、ここから先はよした方がいい。君には刺激が強いからね」
「え? ――あ」
ダタッツとロークが辿り着いたのは――水浴び場。練兵場での訓練を終えた騎士達が、鍛錬の汗を流す場所だ。
その入り口を前にして、ロークの顔が真っ赤に染まる。ダタッツが言う通り、「彼女」には刺激が強過ぎたのだ。
ロークの正体は、騎士団のような宮内の人間以外にはほとんど知られていない。男所帯の騎士団に囲まれて育った結果、このような男勝りに育ったことも含めて。
「……〜っ!」
「すまない。なるべく早く済ませるから、そこで待っていてくれ」
ロークは唇を強く噛み締め、ダタッツを睨み上げる。そんな彼女に苦笑いを浮かべながら、ダタッツは水浴び場へ――
「ダ、ダ、ダタッツ殿!」
――入っていく直前。一人の騎士が、彼を呼び止めた。慄くようなその表情は、他の団員と同じ色を湛えている。
何かの用件があり、怯えながらもダタッツに報告しに来たのだろう。正規団員が予備団員にへりくだるという、本来ならばあってはならない状況に、ロークは拳を握り締めている。
そんな彼女の姿を一瞥し、速く彼の用件を済まさねばならないと察したダタッツは、素早く視線を報告に来た騎士へと移す。
「どうしました?」
「あ、い、いえ……。実は先程、民間人から騎士団への寄付がありまして……。予備団員の剣と盾に充てて欲しいと……」
「予備団員の……?」
現状、予備団員はダタッツ一人しかいない。戦前は数十人規模の人数だったが、王国がアイラックス将軍を失い、敗走を繰り返していくうちに辞任していく団員が続出し、戦後となった今では赤縁の鎧を着た騎士が街をパトロールすることはなくなっていた。
ゆえに今の時期に予備団員充て
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