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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百七十五話 暗い悦び
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かを話し始めた。
近衛兵の暴動、ラムスドルフの働き、宮内尚書ノイケルンの死……。そしてラインハルトからの早すぎる連絡。
「宮内尚書を殺したのは内務省の手の者だろう。卿とリヒテンラーデ侯の暗殺に失敗した事、近衛兵の暴動が鎮圧された事で切り捨てられた」
「……」
「ここから先はエーレンベルク元帥から聞いた話だ。クーデターが成功していれば、ノイケルン宮内尚書はローエングラム伯をオーディンに呼んだはずだ。手を握り新体制を作るために」
俺は首を振った。それは無い、それではあっという間に失敗する。キスリングは俺の否定に頷いた。
「その通りだ、おそらくはノイケルン宮内尚書はローエングラム伯に反逆者として処断されただろうというのがエーレンベルク元帥の考えだ」
「……」
「ローエングラム伯はクーデターを鎮圧し救国の英雄として帝国に君臨する。宇宙艦隊司令長官の座は彼のものだ。オーベルシュタインが書いた脚本はそんなところだろうと」
「……」
「卿とリヒテンラーデ侯の暗殺に失敗した、近衛兵が早々と鎮圧された。その事がオーベルシュタインの動きを止めた。さもなければ今頃はオーディンはローエングラム伯の制する所になっていただろう」
俺はキスリングを見て頷いた。全く同感だ、今回は完全にしてやられた。しかし、未だ俺は生きている。生きている限り俺のほうがラインハルトよりも有利だ、そしてオーベルシュタインもその事は分かっている。つまり、オーベルシュタインとの攻防は未だ続くと言う事だ。
「それにしても流石だな、あの医師を暗殺者だと見抜くとは」
「……」
「あの男は一ヶ月ほど前、ノイケルンの推薦で宮内省の職員として雇われたそうだ」
職員? 俺の疑問を感じ取ったのだろう、俺を見ながら説明するような口調でキスリングは話す。
「医師の資格は持っている。しかし一般職員の方が宮廷医よりも審査がゆるいからな。なかなかしぶとい男でな。未だ何も喋らない」
なるほど、そういうことか。しかし一ヶ月前か、十一月の頭だな、十月十五日の勅令が出た後早急に選んだ、そんなところか。違うな、選びはじめたのはもっと前だ。いくらなんでも二週間ちょっとで人殺しのできる口の堅い医者を見つけるのは難しいだろう。まして暗殺対象がリヒテンラーデ侯と俺だ。宮内省の職員にするのもそれなりに時間はかかった筈だ。
……となるとラインハルトだな。リヒテンラーデ侯邸でシャンタウ星域の会戦後に行なわれたあの会議だ。あの会議の内容がどの時点かは分からないがオーベルシュタイン経由で内務省、フェザーンに伝わった。それも勅令発布の前だ。馬鹿が、あの話は機密扱いだった。知っているのは会議の参加者と改革案を作成したブラッケ達だけのはずだ。それをオーベルシュタインに漏らした、結局あの男にとっては俺
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